田丸雅智 ◈ 作家のおすすめどんでん返し 09

1話4ページ、2000字で世界が反転するショートストーリーのアンソロジー『超短編! 大どんでん返し』が売れています。執筆陣が、大ヒットを記念して、どんでん返しを楽しめる映画やアニメ、テレビドラマ、実話怪談など、さまざまな作品を紹介してくださいました! ぜひチェックしてみてください。


作家のおすすめどんでん返し 09
どんでん返しのその先に

田丸雅智 

 ショートショートという短くて不思議な小説に特化したショートショート作家として活動している。ショートショートといえば、どんでん返し。そんなイメージもあるけれど、現代ショートショートとは「アイデアがあり、それを活かした印象的な結末のある物語」。結末にどんでん返しは必須ではないし、過去の名作にもどんでん返しがないものも多く存在している。

 その一方で、やはりショートショートにはどんでん返し系の名作もたくさんあって、どれもじつに魅力的だ。今回はその名作の中から、オススメの3作品をご紹介したい。
 

アウルクリーク橋の出来事(アンブローズ・ビアス)
 鉄橋の上で、ひとりの男が足元の急流を見下ろしている。男の首にはロープが巻きつけられていて、いま男は絞首刑に処されようとしていた。そして、刑がついに執行されて──。
 臨場感ある描写によって、読み手は男に乗り移っているような気分になる。その男の身に、いったい何が起きるのか。ここから先は、ぜひ本編で。

帰郷(太田忠司)
 汽車に乗り、河を渡り山を越え、ぼくはブラウントゥリーに帰って来た――。
 こんな書き出しからはじまる本作は、たったの数ページしかない。けれどそこには、豊かな世界と濃密な人生がぎゅっと凝縮されている。はじめて読んでから10年以上がたったいまでも、ぼくは本作に思いを馳せるだけでなんだか目頭が熱くなる。同時に自分も、いつかブラウントゥリーに帰郷したくなってくる。

残されていた文字(井上雅彦)
 雪山で遭難して危険な状態にある俺は、いま「この文章」をチョコレートの銀紙の裏に書いている。俺は死ぬまぎわまでこれを書きつづけるつもりだが、文字が書ける紙きれは、もうそんなには残っていない──。
 本作は「俺」が紙きれに書いているという文字で構成されて、その文字は紙から紙へと飛び移りながらつづられていく。そのすべてがつながったとき、あなたもきっと混乱と衝撃に心をひどく揺さぶられる。

 
「これらは、どんでん返しです」
 そう銘打って作品を紹介されると、鋭い方は紹介文を読んだだけでも結末が予想できてしまうだろう。けれど、少なくともこの3作は、結末が分かったとしてもお楽しみいただけるはずである。そしてまた、結末が分かっているのに何度も味わいたくなるに違いない。どんでん返しの魅力というのは、むしろ、どんでん返ったあとにある。


田丸雅智(たまる・まさとも)
1987年愛媛県生まれ。東京大学工学部、同大学院工学系研究科卒業。2011年『物語のルミナリエ』に「桜」が掲載されデビュー。12年、樹立社ショートショートコンテストで「海酒」が最優秀賞受賞。同作は又吉直樹氏主演で映画化。著書に『夢巻』『転校生 ポチ崎ポチ夫』『ショートショートでひらめく文章教室』などがある。

超短編!大どんでん返し

『超短編! 大どんでん返し』
編/小学館文庫編集部

◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第153回
南 杏子『ヴァイタル・サイン』