◎編集者コラム◎ 『死ぬがよく候〈三〉 花』坂岡 真
◎編集者コラム◎
『死ぬがよく候〈三〉 花』坂岡 真
絶賛発売中のシリーズ第3弾、『死ぬがよく候〈三〉 花』が、ついに発売となりました。
3か月前に刊行された第1弾の『月』は、おかげさまで発売直後に大重版が出来!
さらに、3刷目が決まったことで、第2弾の『影』も、そろそろ朗報を聞ける頃おいではないでしょうか。
読者のみなさまに心より感謝申し上げます!
さて、本書の主人公、極悪非道の奴バラも恐れおののく「南町の虎」こと、元隠密廻り同心の伊坂八郎兵衛は、今回の巻でも性懲りもなく女性に惑わされます。
その舞台となる越後出雲崎で彼を翻弄するのは、一体どんなヒロインなのかと申しますと──右目の下に泣きぼくろがある、おきくという名の、妙齢の美人です。
艶っぽい流し目で、「丑松のやつを殺っておくれよ」、そう囁かれた八郎兵衛は、ひとたまりもありませんでした。立身流剣術の達人なのに、まったくの隙だらけ。あぁ、どうして男という生き物は、こうも泣きぼくろのある女性に惹かれるのでしょう。
かの川端康成先生が「学校の花」で、「目は心の窓」と記していますから、泣きぼくろが自然と八郎兵衛の視線をおきくの目に引き寄せて、彼女の真心を見せたのかも──。
それはさておき、なんとおきくは丑松の情婦で、その丑松は日本一の大盗賊だというのだから、八郎兵衛は命がいくらあっても間に合いません。
深みにはまるのを恐れた彼は、おきくが必死で貯めたらしい五十両を目の前にして、仕事と割り切って引き受けますが、あるとき彼女の泣かせる事情を知ってしまいます。
泣きぼくろのある人は涙もろいと言いますが、八郎兵衛もやっぱり涙に弱い。
丑松の背後に見え隠れする巨大な黒幕の存在を知りつつも、八郎兵衛を地獄に陥れるために仕掛けられた〈七曲がりの罠〉に、彼は自ら飛び込んでいくのでした。丑松を葬り去り、おきくを自由にするために……。
自分の業すらままならないのに、他人の業まで背負ってしまう主人公、八郎兵衛の運命や如何に?
会心の剣豪流浪小説第3弾、ページをめくる手が、そして涙が止まりません。