◎編集者コラム◎ 『死ぬがよく候〈五〉 雲』坂岡 真
◎編集者コラム◎
『死ぬがよく候〈五〉 雲』坂岡 真
絶賛発売中にして、シリーズ怒濤の大重版となった超人気シリーズ第5弾、『死ぬがよく候〈五〉 雲』がいよいよ発売となりました!
嬉しくもあり、寂しくもあるこの最終巻、これまで支えて下さった読者のみなさまに衷心より感謝いたします!!
さて、『月』『影』『花』『風』とすべての巻で、麗しき女性にメロメロ、ついついとんでもない頼みごとを聞いてしまい、自ら危地に飛び込んできた主人公の伊坂八郎兵衛。
やはり、さすが武士の中の武士、並の武士とは筋の通り方が違います。もちろん、今回も期待に違わず、がっつり飛び込んでいくのでありました。まさしく完全無欠の武士といえましょう。
しかし、男女の狭間を結ぶ愛に悶えるのも人の業なら、わざわざ火中の栗を拾ってしまうのも人の業──さまざまな人の業の深さを、いつも男女の隘路にさまよいながら、八郎兵衛は教えてくれるのです。
そしてこの最終巻。八郎兵衛は、ダメ兄の出世の賄賂として、ダメ上司のダメ息子に差しだされてしまった、可哀想な妹を救わんと、わざわざ下総国古河藩土井家八万石の筆頭家老に直談判すべく、ダメ兄と可哀想な妹を連れて江戸を旅立ちます。
というのは、ダメ兄もダメ上司もダメ息子も、古河藩士だからであります。まるで古河藩の人々がみんなダメのように感じてしまいますが、そんなことはありません。日本全国、いえ世界中、業にまみれて人間は生きているのですから、人類みな同じ穴の狢。だって人間だもの、仕方ない。
と、話を戻しまして、この八郎兵衛、実は上野国に建つ満徳寺を最終の目的地としているのですが、どういうわけか迂回に迂回して日光街道を下ります。
その事情は読んでのお楽しみとして、ここではご勘弁いただきたいのですが、無敵の必殺剣、立身流の豪撃(こわうち)が閃くのは間違いありません。
秘剣を振るう理由に涙を流さずにはいられない、剣豪流浪小説最終巻。お楽しみください。
──『死ぬがよく候〈五〉 雲』担当者より