今日のメシ本 昼ごはん
使った旬のスパイスカレー!
新潟市の北書店でハロー!ブックス(以下H!B)という佐渡島で行われるイベントを知りました。ゲスト陣の豪華さに驚き、手伝いに行って住み始め、早二年。現在はドーナツ屋をしつつ、「カフェ日和山」を共同運営しています。その店内に設置した北書店・佐藤雄一店長による出張本棚が南書店です。南佐渡と呼ばれる地域にあり、北書店の支店であることから名付けました。今年のH!Bは九月十七、十八日。山あいの廃校で開催する本のお祭り。すばらしい作家さんたちと親しくなれる、たぬきに化かされたのかと思うような夢の二日間です。
○月×日
古い一軒家を借りています。入居してまず購入したのはコーヒーミルとドリッパーでした。H!Bに来た友人を、椅子しかないがらんとした部屋の中、コーヒーでもてなしたのがこの家の最初の思い出です。近くに喫茶店のない島暮らし、コーヒーは自分で淹れるものになりました。山川直人作品の登場人物になったつもりで、台所で一人、ゴリゴリ豆を挽き、ポタポタ湯を落とし、とるるるん、とカップに注ぎます。淹れたてのコーヒーを傍らに、『シリーズ 小さな喫茶店』の物語の中へ。古い喫茶店でひととき交差する、市井の人びとの人生や機微に思いを馳せるのです。
○月×日
「カフェ日和山」へ。日替わりの当番によるランチが楽しめます。旬の佐渡食材を使ったスパイスカレーが好きです。お供は佐渡焙煎コーヒーと、併設の南書店で選んだ『レコードと暮らし』。著者の田口史人さんは、東京・高円寺のお店、「円盤」の店主です。先日、北&南書店連続企画として「出張円盤レコード寄席」を開催しました。かつての暮らしの中のレコードの姿を追体験し、その用途と形態の多様さに驚きました。何より、「物」には固有の存在理由、「言い分」があるということ。レコードの森の中へ分け入った田口さんが耳を澄まし、拾い上げ、大切に集めた、かつて暮らしの中で当たり前に存在した習慣、娯楽、学びや豊かさへの憧れ、感情、歌……。それらから人間の物語の数奇さが立ち顕れ、言い知れぬ感動に鳥肌が立ちました。