◉話題作、読んで観る?◉ 第3回「娼年」
脚本・監督:三浦大輔/出演:松坂桃李 真飛聖 冨手麻妙 猪塚健太 桜井ユキ 小柳友 馬渕英里何 荻野友里 佐々木心音 大谷麻衣 階戸瑠李 西岡徳馬 江波杏子/配給:ファントム・フィルム R18+
4月6日(金)より全国ロードショー
公式サイト▼
http://shonen-movie.com/
©石田衣良/集英社 2017映画『娼年』製作委員会
乱交パーティーに集まった若い男女の本音をえぐり出した三浦大輔監督の映画『愛の渦』(2014年)は、R18指定ながらスマッシュヒットを記録した。直木賞作家・石田衣良の同名小説を原作にした新作『娼年』も、コールボーイという裏風俗を題材にしており、公開前から注目を集めている。
主人公はバーでアルバイトしている大学生の森中領(松坂桃李)。大学の授業に飽き、就職活動にも興味が持てずにいたリョウは、秘密クラブを経営する御堂静香(真飛聖)にスカウトされ、男娼として働き始める。女性との交際もセックスも退屈しのぎに過ぎない、と思い込んでいたリョウだったが、年上の女性たちの奥深い欲望に圧倒されながら、彼女たちを満足させることに喜びを見出すようになる。
本作も『愛の渦』と同様にR18指定となっているが、愛の交歓シーンは男と女との肉体を介したコミュニケーションの場として丁寧に撮影されており、露悪的なものにはなっていない。リョウを指名するキャリアウーマンたちは、肉体的な刺激だけでなく、精神的にも満たされたがっていることがよく分かる。情事を終えた後の女たちの表情は、みんな可愛らしい。様々な女たちとの性体験を経て、リョウが男として成熟していく過程も見どころとなっている。
16年に上演された舞台版に続き、松坂桃李が体当たりでリョウ役を熱演。一糸まとわぬ姿にも清潔感があり、時に戸惑いながら、時にワイルドに顧客をベッドへとエスコートする姿に、ますます女性ファンを増やすことになりそうだ。松坂はコミック原作の実写化『不能犯』では不気味に笑う殺し屋、犯罪映画『孤狼の血』(5月公開)では正義感溢れる新人刑事など作品ごとに異なる役を演じ分けており、今年最もホットな男優と言っても過言ではない。
大人の魅力を放つ静香の他、秘密クラブを手伝う謎めいた美少女・咲良(冨手麻妙)、男の手を握るだけでエクスタシーを感じる老女(江波杏子)など、原作に登場した個性的なキャラクターたちが、どんな生身の肉体を持った"女"として現われるのかという楽しみがある。原作小説と実写化映画との、理想的かつ濃密な関係が築かれている。
(「STORY BOX」2018年4月号掲載)