「おいしい小説文庫」がOPENします!
「食」に関する新レーベル「おいしい小説文庫」が創設されました。3ヶ月ごとに、3、4作品の刊行を予定しています。初回ラインナップ3作品は、6月5日より店頭に並びます。どの作品も著者が手塩にかけた一品です。どうぞお好みの味をお探しください。
本記事では、当レーベル創設の由来を少しお話しします。
直接のきっかけは、昨年はじめた「日本おいしい小説大賞」。集まった作品のレベルが想像以上に高く、とりわけ最終選考に残った作品は、事務局および選考委員たちにして、このまま日の目を見ないのは惜しいと感じさせるほどでした。私たちは、そうした作品の受け皿となる文庫レーベルを作りたいと考えました。
初回ラインナップのなかでは、『氷と蜜』(佐久そるん・著)が同大賞最終選考作です。
著/佐久そるん
6月5日発売予定
かき氷の魅力を存分に書き尽くし、同大賞選考委員・山本一力氏は「脳髄を激しく刺激された」と高く評価しました。
また『泣き終わったらごはんにしよう』(武内昌美・著)も同賞応募がきっかけで出版が決まった作品です。
著/武内昌美
6月5日発売予定
目下、第二回大賞の選考中ですが、今年もレベルの高い作品が集まっています。大賞作品の単行本化だけではなく、さまざまな道が開かれている文学賞です。引き続き同大賞にご注目ください。
さて、おいしい小説文庫創設の背景に話を戻します。
小説家にとって腕の見せ所と言われているのが、食の描写です。池波正太郎『鬼平犯科帳』が色褪せない理由の一つに、作中に登場する江戸料理の「季節感」と応える評論家もいますし、スモーク・サーモンのサンドイッチやオイル・サーディンと聞いて村上春樹を思い出すファンの方も多いことでしょう。
個々の作品としては名作が数あれど、「食小説」として括ってみた際に、テレビや漫画ほどにジャンルとして確立していないという思いが、私たちにあります。今年の本レーベルのラインナップは文庫書き下ろしがメインですが、今後は、既に発刊されている単行本の文庫化や、他社文庫の二次文庫も積極的に取り組む予定です。既存作品も、「食小説」として改めて売り出すことで、新たな読者の手へと届けることができるのではと考えています。
最後に一つ。コロナウイルスが蔓延し、食材買い出しが制限され、外食すら難しい「非日常」を強いられています。せめて小説から「食」という日常を味わってほしいという思いは、日増しに我々の胸のうちに広がっていきました。そうした志は、著者とも共有しています。また、書店に足を運べない方にもお楽しみいただけるように、紙の書籍と電子書籍を同時に発刊するサイマル出版や電子書籍ストアでのキャンペーンといった試みも行う予定です。
本レーベルの作品を手にとっていただくことで、少しでも読者の皆様の心と生活に彩りを添えられれば、と切に願っています。
日本おいしい小説大賞受賞作
著/古矢永塔子
大好評発売中!
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