『暁星』湊 かなえ/著▷「2026年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR

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明けの空に美しく輝く


 都内にあるホテルのラウンジで打ち合わせをしたとき、湊さんの口から語られる今作の構想に圧倒されたのを覚えています。実際に起きた事件を入り口にして、宗教二世問題を描く。誰もが知る事件ということもあって、当初は話を聞きながらも、どうしても事件のほうに引っ張られそうになってしまいました。ただ、2時間を超える打ち合わせを終える頃には、実際に起きた事件はあくまで入り口だとわかり、そこから先の小説世界を早く読みたい──そんな思いに駆られている自分がいました。

 執筆がはじまり、昨年の2月終わり頃から一章書き上げるたびに送っていただき、その都度、拝読していく。そういうスタイルで『暁星』の原稿をいただいていましたが、章が進んでいくにつれ、「入り口」の先にある物語がどんどん輪郭をもちはじめ、「あの事件」のことなど考える隙さえあたえられず、湊ワールドに没入していくような感覚を覚えていきました。

 そして執筆開始から1カ月半。後編「金星」の終章をいただき、最後の3行を読んだ瞬間、鳥肌が立ちました。すぐに答え合わせをするように前編「暁闇」を読み返しました。1周半して、これはすごい小説をいただいてしまった──。早く多くの人に読んでもらいたい。感想を語り合いたい、そう強く思いました。

 新聞、テレビ、SNS──色んな情報の波のなかで生きていて、何かひとつ事件や事故が起きると表面的な情報に流されて、勝手に自分の都合がいいように解釈してしまう。私もそんな至って現代的な思考をする人間の一人だということに気がつくことができたのも本作を担当させていただいたからこそです。

 初版の帯には「ただ、星を守りたかっただけ」と入れ、詳細なあらすじなどはあえて入れませんでした。読んでいただいた方なら、この一文がどういう意味をもっているのか、わかっていただけるはずです。まさに、この一文こそが「表面的な情報だけに流されない」こと、そして「物語がもつ無限の可能性」を表していると思っています。

告白』から17年。湊かなえさんの新たなる代表作と胸を張ってオススメできる作品になりました。「暁闇」と「金星」、ふたつの物語があわさった瞬間、明けの空に美しく輝く「暁星」が見えてくると思います。物語を手にとっていただき、ぜひ一日のはじまりを明るく照らす星を見つけていただければ嬉しいです。

全力PR『暁星』_暁星コーヒー
広島県の書店チェーン・啓文社さんに協力していただき、湊さんがテイスティングをして「暁星コーヒー」も作りました。作中に出てくる「ロブスタ」のコーヒーが「暁闇コーヒー」、朝の爽やかさをイメージしたのが「金星コーヒー」です。

──双葉社 佐野健二


2026年本屋大賞ノミネート

暁星

『暁星』
湊 かなえ
双葉社
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