物語のつくりかた 第14回 マギーさん(俳優・脚本家)

マギーさん

 人気絶頂の中、2002年に活動を休止した演劇ユニット『ジョビジョバ』。14年に待望の復活を遂げ、このゴールデンウィークには2年ぶりの単独公演も控えている。リーダーであり、俳優や脚本家として多方面で活躍するマギーさんの創作観は、『ジョビジョバ』休止と再起動を経てどのような変化を辿ったのか。

 4月末からの『ジョビジョバ』公演に向けて、ネタづくりの真っ最中です。

 メンバー6人が、ふわっとしたアイデアを持ち寄って、少しずつネタを詰めていくのが僕らのやり方。ただし、具体的なコントのアイデアが集まるわけではなくて、各自が興味を持ったキーワードであったり、「こんな感じ、面白くない?」といった雰囲気であったり、本当に断片的な材料を出し合うことから始まります。

 その中でメンバーの誰かが「それ、面白いね」と反応すると、もっとこうしよう、ああしようと、全員で議論が始まる。それを最終的に僕が台本にまとめるわけですが、最初に飛び交うキーワードなんて、他人が見ても何のことかわからないと思いますよ。それでも僕らにはちゃんと意図やニュアンスが汲み取れるのは、やはり長い付き合いのなせる業なのでしょう。

 こういうネタの作り方は、学生時代のノリそのままなんです。変わったことといえば、今はそのやり取りをLINEのグループで行なっていることくらい(笑)。

 ある程度アイデアが固まってくると、台本を書く前に何度もアドリブで演じてみるんです。すると当然、思いもよらない方向にストーリーが進んだりします。でも、「これはこれで面白いから続けてみよう」、「もう一度、こういう要素を入れてやってみよう」などと演じながら仕上げていく。完成形は7分くらいのコントでも延々20分くらい続けることもあります。

 このメンバーが素晴らしいのは、6人のうち黙っている奴が1人もいないこと。全員が参加してネタを揉み、仕上がりが見えてきたところで僕が台本に落とし込む。『ジョビジョバ』を再開してみて、こういうやり方ができる仲間がいることが、心から楽しいしありがたいですね。

芝居仕立ての笑いに開眼!

 小学4年までの僕は、学級委員タイプだったんです。バラエティ番組は大好きでしたが、どちらかというと真面目で、あまり人前でふざけることはありませんでした。

 ところが小学5年の時、親の仕事の都合で東京の学校に転校することになり、ふと思いついたんです。

「転校先では誰も自分のことなんて知らないんだから、今度は最初から面白いキャラでいってみよう」

 そこで転校初日、教室に入るときにコケる真似をしてみたら、これが思いのほかウケたんです。その後の転入生として注目を浴びる数日間、ことあるごとに笑いを取りにいき、皆が笑ってくれるたびに言いようのない快感を覚えるようになりました。そのうち、「将来の夢はお笑いタレント」と真剣に思うようになりました。もし転校初日にスベっていたら、どうなってたでしょうね。今こういう仕事をすることもなかったかもしれませんね。

 ちなみにこの80年代当時は、笑いの形態が目まぐるしく変わっていった時代です。ドリフやひょうきん族が大ブームとなり、そこからとんねるずさんやダウンタウンさんへと連なって行く一方、ライブシーンではシティボーイズさん、イッセー尾形さんなどが活躍されていて。僕はテレビを見ながら、「何が面白いのか」を自分なりに考えて、その中で自分がやりたいお笑いがどのようなものかを探していきました。その結果、自分はどうやらお芝居仕立てのネタ、つまりコントに魅力を感じていることに気づいたんです。


 そうやって好きが高じてたくさん見ているうちに、いつしか東京の演劇シーンに興味を惹かれ、大学の演劇サークルに入った際、同じ一年生として出会ったのが『ジョビジョバ』の6人です。幸運にも『ジョビジョバ』は、早いうちから注目され、僕らは卒業後、そのままプロとして活動を続けることになります。

 2002年に活動を休止したのは、それまでお世話になった事務所から離れること、6人で活動する限界が見えてきたことなどが主な理由でした。だったらここらでそれぞれがソロで仕事をする可能性を探るのもいいのではないかと。活動休止とは言っていましたが、僕らとしては完全に解散したつもりでした。

 その後、僕は福田雄一さんと『U-1グランプリ』というユニットを立ち上げることになりますが、福田さんは当初からこれを『ジョビジョバ』復活の布石と考えていたようです。実際に2回目の公演で長谷川朝晴を、3回目に六角慎司を、4回目に坂田聡をと、旧メンバーを次々に招聘することになり、ひとりひとりとコントをやってみると、改めて皆の面白さを痛感したんです。それで5回目に、福田さんとも、「そろそろ『ジョビジョバ』でしょう」となりました。

 本当は一度きりの、同窓会のような再集結のつもりでした。なにしろ6人のうち2人はすでに芸能界を去り、石倉力はサラリーマン、木下明水は家業を継いでお坊さんになっていたわけですから。

 それでも、12年ぶりに6人が集まると、チラシ用の撮影からすでに、パズルのピースがぴたりとハマるような、独特のグルーヴを感じたんです。実際の舞台もとにかく楽しくて、自分たちにしかないオリジナリティにも気付けた。それで終わってしばらくして、「もう一度、みんなでやっていかない?」と僕から声を掛けたんです。

6人だけでネタをつくるということ

 再び6人でやってみて気づいたのは、グループなら10年後の夢を見られる、ということでした。個人で活動していると、いつも目の前のことに精一杯で、せいぜい次の仕事のことくらいまでしか考えられません。だけど、グループのことだと、もっとずっと先のことまで夢想できる。50代になってこのメンバーでどんなコントをやってるのか想像するだけで、なんとも言えずワクワクします。以前、演出家として『TEAM NACS』の公演に携わったとき、この先もグループで活動し続けるであろう彼らに、ロマンとうらやましさを感じました。それも再起動のスイッチを押すきっかけだったかもしれません。

 思えば、解散直前の時期は、6人の中にかなりピリピリと緊迫したムードが漂っていました。当時は楽しさよりも、常に周囲の期待に応えることと、その真逆の新しさや裏切りを模索することに終始していて、僕がメンバーに要求するものと、各自にできることが乖離し始め、苦しさや焦りの中での活動を強いられるようになっていたんです。

 でも活動再開後は、そんな雰囲気ががらりと変わりました。例えば石倉に対して、昔は多くを求めてダメ出しもしていましたが、今は純粋に「こんなに面白いサラリーマンはいないよ!」となるし、明水に対しても「こんなことができるお坊さんはどこにもいないよ!」となる。芸能界から離れた今の石倉と明水にはどこか「素人だから面白いことできませんけど?」という肩の力が抜けた開き直りがあるんです。それにより『ジョビジョバ』として以前にはなかった味が出せるようになっている。ほんと、僕は怒らなくなりましたね(笑)。

 ソロになってから、僕自身も様々な経験と学びを得ました。それまでは小さな公園で6人のローカルルールでボール遊びしていたのが、外に出て、たくさんの球技を経験していくような。こんな硬いボールもあったんだ! とか(笑)。

 例えば漫画の原作を手がけたことがあるのですが、原作脚本の僕と漫画家さん、そして編集者の3人が、一度もそろって顔を合わせることのないまま作品が仕上がっていくんです。いつも6人でネタづくりをしていた僕としては、これは新鮮な経験でした。他のメンバーも同様に、それぞれが得たものを『ジョビジョバ』に持ち寄って、それによって新しいものが生み出せるのではないかと思っています。

『ジョビジョバ』の、次の活動がいつになるかはわかりません。でも今後も、6人のタイミングが合う時を見つけながら末永く、年をとっても活動を続けていきたいですね。
 

向かいのバズる家族

マギーさんの手がけた最新テレビドラマも
好評放送中!
プラチナイト 木曜ドラマF 
『向かいのバズる家族』

読売テレビ・日本テレビ系にて
木曜よる11時59分〜0時54分放送
出演:内田理央 白洲迅 木下隆行(TKO)
/小野武彦/高岡早紀

 

(構成/友清 哲 撮影/黒石あみ)
 

マギー(まぎー)
1972年生まれ、兵庫県出身。明治大学卒。1993年、演劇サークルのメンバー6人で『ジョビジョバ』を結成。卒業後、本格的に活動を開始。ライブだけでなく、メインのテレビ番組を持つなど人気を博すが2002年に活動休止。以降は俳優・脚本家として活動。出演作にドラマ『99.9 ─刑事専門弁護士─』など、脚本作品にドラマ『カンナさーん!』『臨床犯罪学者 火村英生の推理』など多数。

 

マギーさんをもっと知る
Q&A

1.夜型? 朝型?
最近は夜型です。夜間を執筆にあてて、明け方4〜5時頃に眠り、だいたい10〜11時に起きる毎日です。

2.お酒は飲みますか?
今年から控えています。連ドラの脚本に取り掛かり始めたので、起きた瞬間から頭が使えるようにしたくて。

3.犬派? 猫派?
どちらもあまり好きではありません。動物が苦手。

4.仕事上の必需品は?
締め切り。書き物の仕事の時は、自分で必ず「○日までに○ページ」といったスケジュールを立てるようにしています。 

5.ストレス解消法は?
以前はゴルフの打ちっぱなしでした。でも、全然上達せず、かえってストレスが溜まるので今はやめてます(笑)。

6.オフの日の過ごし方は?
映画をよく観ています。  

7.影響を受けた映画は?
ジャッキー・チェンの一連の作品。小学生の頃に『プロジェクトA』にハマったことから映画好きになりました。作風というより、自分で監督や脚本、そして演者をやるスタイルに影響を受けました。

8.影響を受けた本は?
江戸川乱歩の「少年探偵団」シリーズ。自分の作風とはまったく違いますが、子供の頃、貪るように読んでいました。

9.もし今この仕事をしていなかったら、どんな仕事をしていたと思いますか?
お笑いが大好きであることに変わりはないので、この世界の裏方にいたのではないでしょうか。


 

ジョビジョバライブ

ジョビジョバライブ『LET′S GO SIX MONKEYS』

2019年4月27日(土)〜5月6日(月・休) 
品川プリンスホテル クラブ eX

構成・演出:マギー
出演:マギー、長谷川朝晴、坂田聡、
六角慎司、木下明水、石倉力

チケットに関する問い合わせ
Mitt   TEL 03-6265-3201(平日12:00〜17:00)

〈「STORY BOX」2019年5月号掲載〉