◉話題作、読んで観る?◉ 第14回「翔んで埼玉」

◉話題作、読んで観る?◉ 第14回「翔んで埼玉」

©2019映画「翔んで埼玉」製作委員会
脚本:徳永友一/監督:武内英樹/出演:二階堂ふみ GACKT 伊勢谷友介 ブラザートム 麻生久美子 島崎遥香 成田凌 中尾彬 間宮祥太朗 加藤諒 益若つばさ 武田久美子 麿赤兒 竹中直人 京本政樹/配給:東映
2月22日(金)より全国ロードショー
▼公式サイトはこちら
http://www.tondesaitama.com/


 東京都に最も近い"ローカル"である埼玉県を徹底的にディスった魔夜峰央のギャグ漫画『翔んで埼玉』が、二階堂ふみ、GACKTのダブル主演作として実写映画化された。2つの点で注目される異色コメディとなっている。

 埼玉県民は通行手形なしでは東京都に入ることが許されない世界の物語。都内きっての名門校に、帰国子女の麻実麗(GACKT)が転校してくるが、校内にはびこる出身地差別に麗は驚く。埼玉出身者は腹痛を訴えても医務室は利用できず、生徒会長の壇ノ浦百美(二階堂ふみ)から「埼玉県人には草でも喰わせておけ」と暴言を吐かれる有り様だった。

 東京生まれの百美は埼玉県民を毛嫌いしていたが、麗と行動を共にすることで地方蔑視の愚かさに気づく。やがて2人は埼玉県と千葉県との熾烈な抗争に巻き込まれていくことに。

 原作が発表されたのは1982年~83年。新潟から上京してきた魔夜は編集者の勧めで埼玉県所沢市で暮らし始め、所沢ののどかさに対する親しみと東京への憧れが葛藤する感情を『翔んで埼玉』として描いた。だが、魔夜が横浜へ転居したことから、ストーリーは未完のままとなっていた。

『のだめカンタービレ』『テルマエ・ロマエ』などコミック原作のヒット作で知られる武内英樹監督は、麗と百美を主人公にした伝説パートに、東京へのコンプレックスがいまだに拭えない現代パートを加えた二重構造のドラマにすることで物語を完結させた。未完だった幻のコミックに新たに命を与える試みだと言えるだろう。

 もうひとつの注目点は、日本では珍しい差別意識をテーマにしたコメディだということ。ナイーブな問題をナンセンスギャグで笑い飛ばしてみせる。埼玉県民かどうかを草加せんべいを使って"踏み絵"をさせるなど、いちいち目くじらを立てる人もいないはず。また、二階堂が男性、GACKTが高校生を演じることでフィクション度をより高めている。

 主演の二階堂とGACKTは共に沖縄出身というのも興味深い。現実社会には、笑いでは済まされない地方蔑視の歴史がこの国には存在する。地方出身者たちの怒りが爆発するクライマックスは、まったくの絵空事とは言い切れないものを感じさせる。

(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2019年3月号掲載〉

原作はコレ☟
『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』
『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』
魔夜峰央/著
(宝島社)