十二月の辞書

「推してけ! 推してけ!」第26回 ◆『十二月の辞書』(早瀬 耕・著)
評者=池澤春菜(声優) 水晶の明晰さと透徹性を持ち、時間をかけて育つ物語 水晶のようだ。ゆっくりと、物語は育つ。1992年にデビューし、この30年で、これが6冊目。寡作と言ってもいいかもしれない。ただ、早瀬さんの物語は時間をかけて育つ。水晶の明晰さと透徹性を持ち、二つとない結晶として生まれてくるのだ。氷だったら数時間で
早瀬 耕『十二月の辞書』
設定していなかった朱鞠内湖のほとり 短編小説『十二月の辞書』を長編にリメイクした草稿では、北海道の陸別町から物語が始まっていた。北見と帯広の中間地点にある小さな町で、とてつもなく寒い場所なのだという。内陸の町なのに「陸から別れる」という当て字も、物語の冒頭にふさわしいように思えたし、天文台とプラネタリウムもある。陸別に