しらいし かずふみ
白石一文
一九五八年福岡県生まれ。二〇〇〇年『一瞬の光』でデビュー。〇九年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞、一〇年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。近著に『道』。
読み手の世界の認識を揺さぶる、壮大なスケールの小説を描いてきた白石一文。このたび最新長編『道』を発表した。中年男性が、かつて失った大切なものを取り戻すため、1枚の絵を手がかりに時空を超える。タイムリープした先の世界に、想像を超える事実が現れ、物語は未知の領域へ。時間という、定まりのない概念の言語化に、極限まで迫った傑
もしも、あの時ああしていたら、自分の人生、どうなっていたんだろう。誰しも思い当たる節があるそんな瞬間に本当に戻れたら、いったいどんなことになってしまうのか。そのあとは、思い描いたように新たな時を刻んでいってくれるのだろうか。ひとことでいえば、本作はタイムリープのジャンルに入るはずですが、「もしも、あの時」というこの一
女と男は一度、本気で戦う必要があるのかもしれない。 単行本で600ページ超の大作『ファウンテンブルーの魔人たち』について、まったく展開を決めずに自由に書いたという白石一文さん。だが、書き進めるうちに、自身の中にあった問題意識が鮮明になっていったという。それは男と女、そしてセックスに対する違和感で──。
第一部 1 二〇二一年二月十九日金曜日。帰宅は午後十一時過ぎだった。今週はシフトをずらして、夕方には帰宅できるようにしていたが、今朝、出勤してみると三日前に出荷したデコレーションケーキのクリームに糸くず状の異物が混入していたとのクレームが発生しており、慌ててラインをストップしてスタッフ総動員で原因究明に当たらなくてはな
十二年前のメモ書きから生まれた小説
もしも長年連れ添ってきた配偶者が、巨額な資産を隠し持っていると分かったら? そんな現実にはありえなそうな、しかしちょっぴり夢見たくなるような出来事を発端に、意外性