道尾秀介
姉が行方不明になった。それから一年経って、姉の不在はあたりまえになった。姉宛てに届く年賀状、それを伝える口実で姉のスマホに送るメッセージ。ずっと既読はつかない。それでも送りつづけ、いつか電源が入る瞬間を待つ家族。その、淡々としていながらどこかが裂けて空気の漏れつづける日常が、淡々としているからこそなまなましい。あれ、
小学校時代、同じクラスだったT君が放課後にカメレオンの話をした。「飼ってるから見に来てよ」ランドセルを背負ったままT君の家に向かいつつ、僕は気が重たかった。それまでも彼は、狂犬病の犬がよだれを垂らして走っているのを見たと言ったり、ツチノコを捕まえたと自慢したり、自転車の前輪と後輪が同時にパンクして死にかけたと話したり
あれは忘れもしない小学三年生か四年生かそのくらいの頃、友達数人といっしょに禁断の果実を食いまくったことがある。校庭の隅に植わっているビワの木が、毎年夏になると実をたくさんつけるのだが、絶対に取ったり食べたりしてはいけないと朝礼で言われていたのだ。
東西を流れる西取川によって「上上町」と「下上町」に分かれるその地域は、川漁師が舟の上で松明を揺らし、鮎を驚かせて網に追い込む火振り漁で知られている。もうひとつの名所は、全国的にも珍しい「遺影専門」の