ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年2月後半★

2月11日
ラジオでバレンタイン邦画『大失恋。』について語るために早起きして映画を観直す。新人時代のスター俳優が多数出演する遊園地映画。クリスマスシーズンからバレンタインに至るまでの遊園地を舞台に8組の男女が繰り広げるそれぞれの失恋を描いたチャーミングなラブコメ。
言ってしまえば世界なんていつもそうだけど、さまざまな事情を抱えた人々が同じ場所で同じ時間を過ごしている物語がどうしても好きだ。群像劇の形式の中でも、ひとつの場所を舞台にして複数の登場人物のドラマを描いていく(それが重なったり、重ならなかったり……)、いわゆる「グランド・ホテル方式」の作品には年々惹かれているかもしれない。自分がステージに立って客席をガン見してライブをしているときに生まれる感動に近い。今日最悪だったり、全ての調子がよかったり、バイト辞めたかったり、病気治ったり、この日のために買った服を着たりして、私含めてそんなバラバラの人生を持ち寄って、同じ場所で同じ音楽を聴いて、この前と違う歌詞で泣けてきたりして。
去年の札幌でも近い情景を見た。白い恋人パークを満喫して広場に出ると、誰もが空の方を見上げていた。何かあるのかなって無意識に私たちも上を見る。毎時0分にからくり時計の塔から音楽が鳴って人形が動き出すのだった。あのとき本当にみんなで時計塔を見た。ずっと機嫌が悪かった子ども、老夫婦、別の方向の写真を撮ろうとしていた私と友達。ああいう瞬間のことを私はかけがえないって思う。他人すぎて好き。時計台が素敵かどうかももはや関係ない。そういう作品がいつか作れたらいい。
夜はフィロソフィーのダンスと太陽とシスコムーンのツーマンライブへ渋谷duoに行き、11年間フィロのスのオタクだったのかよってくらい泣いちゃった。
2月13日
日本橋で、アンテナショップってまだエモくないなと気づいた。
2月14日
秋から計画されていた『カラマーゾフの兄弟』の読書会の日。柚木麻子さん、金原ひとみさん、太田莉菜さんで集合。柚木の指定したカフェが私にとってわけのわからない位置にあり、遅刻していた上に店を探すのに時間がかかり、やっと店と三人を見つけて「ここは、どこなんだよ!」と、到着しているのに何度も言った。
上中下巻を読了しているはずだった今週の私は、ほとんどカラマーゾフの兄弟を読めていない現実を納得させる自分への言い訳をいくつも考えていた。①柚木さんはほぼ読めたらしいから、今年はこの学校から一人東大合格者が出た!おめでとう!みたいなことでいいのでは説。②仕事でもなんでもないわけだし、読書家になりきれない私がドストエフスキーを100ページでも読んだだけで世界の大きな変化である説。③もともと柚木さんが読みたくて始めた話なんだから、柚木さんが読めたんだったらそれでいい説。どれも有力な仮説だった。自分にがっかりしている場合ではないし。
SOMPO美術館まで歩いて金原さんと太田さんと三人で『モダンアートの街・新宿』。太田さんは展覧会を見て回るスピードが基本的に速いらしく、それを予告的に宣言してくれていた。たしかに速かったけど、他の二人にはやくしてよーって思って待ってるわけじゃないってこともなんかはっきりと優しく伝わっていたのでそれぞれの時間感覚でゆっくり見た。文芸誌『白樺』の装丁はこんなに可愛かったのだね。
2月15日
メガネスーパーに行ったのは色弱についての検査をするためだった。私の目は色弱で、細かい違いがわからない時があって、日常生活や仕事では困らない程度だ。人と見えている色が少し違うことに気づいたのは10年前くらいな気がするけど、ずっとほっといてた。でもメガネスーパーには色覚特性補助レンズ(これが高いんよ)っていうサングラスみたいなのがあり、ほとんどの他人が見ている世界に近い視覚を試してみるのもアリかもしれないと、今週急に思い立った。
点描された数字を読むやつとか、色のパズルのような駒をグラデーションで並べるとか、いくつかの検査をする。言葉の歴史は知らないけど、「色盲」とか「色弱」とか「色覚異常」という言葉は使わなくなって、「色覚特性」という言葉で店員は話す。私の色覚では三原色が同じバランスを保てておらず、1:1:1が1:1:2になっているから、その割合を同程度に押し上げるためにカラーレンズで補助をする、的なしくみらしい。多様性について語る中高年、といった感じですごく気を遣っていた。アプデおじ。これは「特性」で、逆にみんなとは違う世界が見えているって捉え方もあって、このレンズをつければ正しく見えるってことではなくて、他人と意見を擦り合わせやすくするみたいなもので……って優しく説明してくれた。なんか、いいんだよそんなに私はバカにされたような気分になったりしないから大丈夫だよ!
ピンクのレンズの濃さを2種類試している時、いつも見ているような映像を見てみますかとか言ってYouTubeで流されたプレイリストは「冬の名曲J-POP」だった。私の人生には、自分の色覚特性に向き合いながら、狭い部屋でおじさんと二人で広瀬香美さんの『ロマンスの神様』のMusic Videoを見ている時間が発生していた。「すみません、ゲレンデがほとんど白なので、もう少しカラフルなもので検証したいです」と伝えた。
2月17日
MAPAとツーマン楽しすぎた。
キラキラの杖をメンバー全員使って自撮りしてくれて、持ってきた甲斐あった。
2月18日
起きたら9時50分だった。本当は10時入りです。ついにラジオに遅刻、か? 最悪。目覚めとともにタクシーを呼んだけど全ての道が混んでいてその場で降ろしてもらってよくわからない駅から電車に乗った。出演開始時間に10分遅れてしまった。11時からの自分のコーナーには間に合ったので「セーフ」「間に合ってよかったですね」と言ってもらったけど全然間に合ってないです。武田砂鉄さんに「起きたとき何を思ったんですか」って聞かれて、「まだ何も思っていません」と答える。咄嗟に答えたけど本当にそうだった。何も思えずにいるときってあるね。あってはならないことだけど、ラジオの遅刻は一回なら笑って許していただけることがわかった。なんか私よりも真面目な人だったらもっと精神状態やばかったと思う。
図書館で仕事をしたり大学で授業を受けたり、遅刻した割に充実した1日を過ごしたけど、なんとなく、もうだめだーみたいな気持ちがある。いつもある気もする。最寄り駅について、特に何か目当ての本があるわけでもないけど近くの書店に立ち寄ると、私と全く同じ状態の友達が本屋にいた。『Quick Japan』が置いてないらしい。たしかにこの本屋では見たことないかも。この前誕生日だったけど何もしてあげてないからなんか買ってあげたい。
さすがにファミレス行くかってなってファミレス行って、適当な組み合わせのパフェに文句を言いながら存在しない新書のタイトルを出し合っていたら「面白くない人の9割が私」という言葉に行き着いた。この人の前にいると全てを話しすぎる。秘密を打ち明ける類ってよりも、ただ口が回りすぎる。さすがにカラオケ行くかってなってカラオケ行って、ハロプロ縛りで熱唱した。太陽とシスコムーン『ENDLESS LOVE〜I Love you more〜』を一緒に歌ったら気分がよくなってきて、『サマーナイトタウン』も全力で歌った。『有頂天LOVE』もつんく♂さんの仮歌のようにパフォーマンスした。
大人の友達は近くに住んでいても、結局そこまで頻繁に会うってわけでもなくて、でも、たまたま会ってファミレス行けたりすんのは近くに住んでるからだよなーありがとう。
2月19日
tanakadaisukeの展示会でシルバーのスパンコールで全身が埋め尽くされたタイトなセットアップを着て、ショーピースの王冠までお借りして、プレスの方々とYUHEIさんと盛り上がって写真を撮っていた。その瞬間、デザイナーの田中さんが完璧なタイミングでギャラリーに現れた。やっぱり輝く人にはこういう、時を摑む才能もあるのだなと実感した。YUHEIさんが「長門有希みたい……」と言ってくれたカーディガンを買うことにした。
夜は阿佐ヶ谷でイベントを見に行った後、みんな帰って、一人になって、駅の前で立ち尽くしてしまった。何があったわけでもなかった。気持ちをどうすることもできず、動かない体をどうすることもできなかった。お腹が空きすぎていた。立ち尽くす、それは感情みたいなもので、それ以上に解像度を上げたって、楽しくないからやらない。別に倒れそうでもない。誰かに会ってなんでもない話を聞いて欲しかった。イベント会場に戻れば知り合いもいるし、阿佐ヶ谷に住んでいる人に連絡してもいいし、その近隣に住んでいる友人にLINEをしてもよかったけど、なんか無理だった。断られるかもしれない連絡をする力がなかった。どれくらい時間が経っただろう……そんなに経ってはいない。一歩一歩足を動かして、電車に乗って乗り換えて。最後の乗換駅のホームまで着くと、とある友達から「会いに行くよー今どこー」とメッセージが届いた。私あくまで孤高な感じだけどこんなに優しい人が周りにいてもいいのかな。でも本当は締切もやばいし、とにかく腹が減っていて私にはエネルギーがなく、入った改札から出て行きたいことを駅員に申し出るための力が残っていなかった。空腹が過ぎると駅員に何かを申し出ることもできないのだ。ごめんありがとう今日はもう大丈夫ーって言って電車に乗ったけど、やっぱり会いたいなと思って家の近くの店まで来てもらうようにお願いしたら来てくれた。あたしはお友達プリンセス。なぜかニット帽をくれた。
20代の私……25歳まで学生だった私は、主に渋谷で立ち尽くしていた。真夜中ではなく夕方だった。やることがなく、できることがないという思い込みに覆われて、食べたいものも思い浮かばず、帰りたくもなく、お金もなく、誰にも会わずに、立ち尽くしていた。いつも渋谷区内を歩きすぎて疲れていた。青山からアップリンクは遠いのだ。荷物の重さにも立ち尽くすまでは気づけなかった。そうだった。私は部屋では天井を見て、外では立ち尽くしていたのだった。そんな自分の東京の原体験的な感覚を最近は忘れてしまっていたのも恐ろしかった。人生で最も立ち尽くした地域は渋谷だろう。どこよりも愛しいわけでもなく、別に嫌いでもない、それでも結局は特別な気持ちもある街。そんなとき、目の前にある選択肢はいつもツイッターとカラオケとツタヤだった。立ち尽くしたらカラオケに行って、一人で気が済むまで歌った。大学生のカラオケといえばフリータイムとかオールとかあるんだろうけど、私はいつも夜料金になる前の時間帯の2時間くらいを一人で歌った。それで前より気が晴れたり、心に何も起きなかったりした。カラオケが好きだって公言してるけど、好きだからだけど、あのとき行ける場所が昼の安いカラオケしかなかったんだった。誰も聴いてくれはしない歌、何を歌っていたんだっけ。今もAメロから歌える歌なのかな。おびただしい数のJ-POPを、自分の歌を手に入れる前に歌い残した、私だけの渋谷。もう渋谷にはいないけど、私はまだここにいる。
2月22日
セブンイレブンのさば味噌おにぎりがおいしくてほぼ毎日食べてる。
2月23日
ロフトヘブンでバラ色流星群。ハロプロサブスク大解禁に乗じてハロプロの好きな曲を紹介しながらカラオケをしま〜すと直前に告知したのにハロヲタがたくさん来てくれた。私がアイドルを好きになったのはプラチナ期のモーニング娘。がきっかけで、ある時期までのハロプロ楽曲は聴けるだけ聴いていた。今は周りにハロヲタ文化人がたくさんいる(ありがたい環境)ので、ハロヲタとして人前に出るみたいなことはしてこなかったけど、我慢できないよねこんな機会は。日常的で切ない気持ちを抱きしめて踊りたいし人生に向き合って輝きたいと思ってるから、ハロプロが好き。つんくさんソロの『TOUCH ME #1』まで歌ってしまった。
2月25日
明日、J-POPについて対談する大森靖子さんから、「明日何着る?」と撮影の衣装をどうするかって連絡が来て、本当にこの人はひとつひとつの仕事を大切にする人だなあと思う。せっかくスタジオで撮影だからさって言って、表紙だと勘違いしてきたくらい派手な衣装を着ていこうよ、メイクは伊東美咲みたいな水色のアイシャドウにしようねってことになったけど、「せっかくだからいいものにしたい」って気持ちが大森靖子だよなと改めて。
2月28日
Vlogの編集が終わらなくて朝から夕方までカフェに居座り続けて編集を進めた。楽しいけど時間かかる。10年前からやっとけばよかった系。
夜、カラマーゾフに続いて結局全然読み終わらなかった『嵐が丘』をIMAXで観る。読み切る約束をした友達は結構読み進めたっぽい。元々、使用人が語り手になって昔話を教えてくれるという体裁の小説だから、作り手の大胆な解釈がなければ映像化はできない。変な映画だったけど、うちらみんなで変な映画を作ろうぜって気概で作ったんだろうってことが伝わってきた。キャサリンが使用人のSM行為を覗き見してヒースクリフの誘いを断った翌朝、パン作りのショットから始まる場面は、キャサリンの世界が「目に映る全てのことはエロメッセージ」になってしまったため、尋常ではない様子でパン作りがまなざされていて笑った。イザベラが作った性器が飛び出すエロ絵本も奇天烈を極めていた。基本的に欲望に突き動かされる人間たちの異様さが映されていた。目隠しへの執着はなんだったん。この映画はたぶんヒースクリフのような男をセクシーと思えるかどうかが全体の感想に大きく関わってくるんだろうけど、俺は全然ピンとこず、なんかayuの最初の夫……マニュエル・シュワルツの顔を思い出して、TOKIOの長瀬に似てるよなと頭の中で確認した。日本で今、ヒースクリフを演じるなら東出昌大でしょうか?
帰りに歌舞伎町のコメダに行ったけど、コメダが好きだって人に話すと「豆菓子いいですよね」って態度で話を返されるときがあり、私は別に「コメダの本質は豆菓子にあり」と考えたことがないので、申し訳ない感じになる。みそカツパンとバナナジュースが好きなだけだから。そういうのはよくある。昔からタイ料理が好きだけどタイ料理の話をすると「パクチーが好きなんだ」と思われてしまう事態がパクチーブームの頃はよくあって、私はパクチーは好きでも嫌いでもないので、申し訳ない感じになっていた。でも、餃子は酢胡椒で食べますよ。
(次回は5月14日に公開予定です)
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『OVER THE AURORA』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。
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