ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年7月後半★

7月14日
あと10分早く目が覚めていたならば『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』を観に行くはずだった。9時40分の有楽町の上映に間に合うようには、生まれて来ていない。私が生まれた時刻は深夜2時半だから。また感動するチャンスを睡眠によって手放す。とはいえ、おはようだから。私は今、おはようだから。終わりじゃない。始まりさ……。埋め合わせを探してテレビをつける。新しいものが見たい。まだ見ていない作品は、すべて新しいものなのだ。
OLドラマが見たい。私は元来OLだから。そんな自己紹介をすると人を困らせるだけだから言わないけど、私はクラスで一番面白いOLだから。ドラマ『彼女たちの時代』が見たくなってFODに久々に加入。1999年、26歳、深津絵里、水野美紀、中山忍。1話、深津絵里(羽村)が会社のトイレで泣いているときのモノローグで泣いてしまう。なんか全然、泣いてしまう。朝の私はとても素直だから。私と友人がよく話しているようなことだった。
「……でも、何かしたい。自分が変われるほどの出来事なんて、もうないのかもしれないけど、何かがしたい。何もかもを忘れるほど、何かに夢中になってみたい。心の底から笑ったり、怒ったり、泣いたりしたい。……」
私がOL魂の持ち主だからなんかもしれんが、人間が生きてみて感じることって27年経っても変わんないね。やっぱり普遍性あるなあ。いや、この世に自由意志はあるよ。そう思わないと生きてられんよ。でも別に唯一無二なんかじゃないよ。私たちは守られてる。過去に他人が経験してきた感情に守られてる。自分だけじゃないって安心するためにも、自分だけじゃないって絶望するためにも、たくさんの作品を見ることは大事なことで嬉しいこと。自分の気持ちはどうしても大切すぎて輝いて見えるし、それは絶対に大切であれよなんだけど。
姉夫婦が野球を見に東京に来たので三人で蕎麦を食べる。そのあとひとりで早稲田大学演劇博物館で展覧会『千変万化する恋』。日本のロマコメ映画の歴史を振り返るという労作。どうやら私はメロドラマばかり見てきたらしくロマコメ・ラブコメ作品に疎いことをここで思い出した。去年神保町シアターで観た山田邦子×斉藤由貴のクリスマス映画『君は僕をスキになる』は、クリスマスイヴという日を、ヒロインの恋が実る夜として描いた最初の日本映画らしい。財布を忘れて来たので図録を買えなかった。
7月15日
ラジオ終わりの電車でたまたま砂鉄さんに会う。結構大切めな話をゆるやかに普通そうに話す。砂鉄さんは私のことを〝雑誌タレ〟の後輩だと思ってくれているようだ。
二人きりで話す機会はこれまでになかったと気づく。
かけがえなかったのかもしれない。
7月16日
『孤独はかけがえないディスコ』初校ゲラにとりかかる。数ヶ月後には書籍になるらしい、本当に?この、でっけー書類。本のようにレイアウトされた文章に、校閲と編集のチェックによって、文章の細部への指摘や質問や提案がなされている。それをどうするか一つ一つ考えていくのと、自分で読み直して加筆や修正を加えていく作業。これによる通いカンヅメこそが、私の夏である。こんなの絶対出版社にわざわざ来なければ出来ない作業だけど、ほとんどの小説家やライターたちはこれを自分の部屋でひとりでやっているのだと思うと凄すぎる。自信持って言うね、私だったら絶対サボります。7月に送られて来たら長袖を着て提出することになる。本を出す人はみんなすごい。
Zepp ShinjukuでZOCXのライブ。実は現体制のライブを見るのは初めてだった。でも聴いてるから好きな歌ばっかりで、なんかずっと泣いてしまって、私ってZOCXの在宅だったのかよってなった。猫猫猫はう様にもありえないほど久しぶりに会えて、嬉しそうだったのが嬉しくて、でも写真撮って二言話したくらいで、それがなんか歌舞伎町っぽくて私にはよかった。猫はうは私のことをどんな風に覚えているんだろ。
大森さんはあらゆるの人の声とか、声に出せなかったこととか、何もかも歌にして音楽にして歌ってくれるけど、今のZOCXは、歌の中にいる人の複数の声が直に鳴ってる感じがした。散々言われていることかもしれないけど。色の違う歌声があって、さらにその魅力がソロパートだけで炸裂するのではなく、全員で歌うユニゾンやハモでものすごいボーカルになっているのがすごいと思った。心臓に届く歌。本当は何層なんだ。『tiffany tiffany』のラストのボーカル、重厚で繊細でもう壊れることのない美しい音圧、あれは諦めなかった人、諦めない人にしか出せない声。重くしてしまった幕はそれでも上がり続けさせられるのだと私は知った。
最近の私はほんと典型的アラサーOLメンタルだった。少し前の自分はもっと感動していた、心が震えていた、切迫していたのに、何を見ても心が心だけにならなくて、もう、最悪なことも特にないけどなんか自分はつまんなくなったのかな?もう時空が歪んだり魔法使えたりしないのかな?泣けないかな?最悪。と思っていた。でも今夜の私の心は猛烈に震えていて (特に『CUTTING EDGE』)、私の感性はまったく死んでなかったんだと気づいた。私の中にいるさまざまな人が泣いていた。なんでも感じていいんだよなって思えるし、そう思う前に何もかもを感じてる。誰に説かれる自由よりもここが自由、そんな場所で、そんな夜だった。
ライブの後に日記を書くために喫茶店に入ったのに、しばらく頭が号泣していて、90分間パソコンを出すことすらしなかったので、もう帰った。
7月17日
朝。EBiDAN公式が出していた「EBTi診断」をやったらあなたの推しは「ギャップ萌えシャイボーイタイプ」と出た。恥ずかしい。推しはいない。
昼。ゲラ作業をやりに河出書房の社屋の会議室を取ってもらっていたのに、他の締切がままならず、なんだか体も動かず、大変申し訳ないですがゲラを自宅に送ってもらえないでしょうか、自宅で土日に作業しますと連絡する。「本当はゲラを見たくて見たくて仕方がないのですが」と送ると編集者から「ゲラもゆっきゅんさんに見てもらいたくて仕方ないのではないかと…」と返ってくる。なんとか2ヶ月前の日々を思い出して書いた日記を提出。
夜。友達Aが今夜暇そうであることを感知し、このあと21時にあの公園でアイスを食べるよと集合の号令。引っ越しても、わざわざ行く。じゃあ花火もやろうよと、さらに友達BとCに連絡するも返事は来ない。とりあえず二人でアイスを食べることから始める夏らしい夜。Bもヘラヘラと笑いながら歩いてやってきてアイスを食べている。私はこの公園で去年も一昨年も花火をしたのだった。去年はこの三人で、一昨年はAと二人だった。一昨年の花火はひどかった。あの夜も何時間も公園にいて、もう喋り疲れていた。だけどコンビニにアイスを買いに行ったら、花火が売られていて、そうなると、やるしかない。花火は家族や友人グループで楽しむものだから何十本も入っている。火をつけて、花火を見て、散って。繰り返しているうちに友人は花火に飽きてきていた。食べても食べても減らないパッタイみたいだった。結局、早く終わらせるために、線香花火を4本まとめてやっていた。手持ち花火が消化試合になることもある。エモくなさすぎて、これからの花火の可能性を感じた。毎年、たまたま花火をしている。夏は約束じゃない。今日も偶然を守る。TWICEを踊った。
7月18日
メディアに掲載されるプロフィールが時々、「アイドル・モデル・俳優」とされてしまうときがあり、あれはWikipediaか何かのせいなのだろうか。私はモデルも俳優もやっていない。私は何をしているのか。私には何ができるのか。それを最も実感できるのは、大切なこと以外がどうでもよくなれるのは、やはりライブなのだった。本日の現場は高円寺HIGH。ライブが最近いつも久しぶりに感じる。いろんな仕事があるからだ。でもやはりライブである。人間の目を見る。その目が映して来たこれまでをできるだけ感じ取ろうとする。色々なことが伝わってくる。その面倒な色々がその人を作っている。それを私が愛している。歌が好き。
7月19日
20日の午前と呼べる時間になってしまっている。19日の27時前にやっと『孤独はかけがえないディスコ』の「はじめに」にあたる文章が書けて、グループLINEに送る。夜分にすみません、姫ですみません、だけど今が一番早いからもう許して。もう誰も起きていないから逆に送り放題みたいな時間ってある。27時のプチ推敲が止まらなくなり、もう送ったのに、Wordファイルを30分間で4回直す。メッセージの送信を取り消しました、メッセージの送信を取り消しました、メッセージの送信を取り消しました、メッセージの送信を取り消しました。間抜けで可愛い私の傷跡。これで私の本のための新たな執筆はやっとおしまい。本の表紙の状態、まんま今の自分だ。マイスウィートピアノちゃんのかわいいスタンプの一押しして、就寝。
7月20日
久しぶりに行く弥生美術館で、かつて存在したティーン向け占い雑誌『マイバースデイ』の展覧会。少女たち(少年読者もいただろうけれど)の苛烈な日常、その中にある願い、祈り、恋心、友情、不安を抱えながら生き抜くためにあった、占いやおまじないたち。原画や誌面を見ると、これを必要とした人の姿が浮かんでくるようで、私の心はいっぱいになる。
一時期の表紙を毎月担当していたまつざきあけみ先生の美しい原画は、どんなに近くで見ても、髪の毛の描写がどのような仕組みになっているかわからない。最後に足されるのであろう白は、少女マンガの核である目の中の光だけではなくて、そのキラッは髪のツヤ部分にあったり、なんでここなんだろうって箇所にもあったり、そこには作者独自の感覚がある。きっと多くの少女マンガの描き手が好きな工程なんじゃないかと思う。須藤絢乃さんも写真作品にラメを載せるとき、作品に導かれることがあると言っていた。
帰り道、ひまわりを眺めていたら、架空の嫌いなZINEのタイトルを思いついた。
ごはんつ部。
7月23日
いつものことだけど懐かしいMVをYouTubeで見直している。私はELT(Every Little Thing)をよく聴いていた。スペースシャワーTVで何度も流れていた『ささやかな祈り』。空港のベンチに片膝を立てて座る持田香織がかっこよくて真似していた。座り方を。
サビ前から登場する坂井真紀さんが本当に可愛くて、眉上前髪でキャリーを持っていて、そのままドラマ『すいか』に出演していても何の違和感もない。この伝説の可愛さはちゃんとY2Kリバイバルで注目されたか!?Pinterestされてんのか!?と期待してみたが、まだ気づかれていないようだった。今からでいいから見てほしい。誰かのロールモデルになりうる。ドリカムの『マスカラまつげ』MVの加藤ローサさんくらい、良い。
夜はILLITのコンサートに青海に行った。ゆりかもめで会場に向かっていると、『今日好き』みたいな男の子がモカちゃんのうちわで体を仰いでいた。アイドルのうちわは時に、元来の用途にも利用されるのだ。あの『今日好き』みたいな男の子二人が高校生なのかも大学生なのかもわからない。とにかく、『今日、好きになりました。』に出ていそうな人たちだった。
ILLITのウォンヒちゃんを見ていて、野球選手の娘みたいな顔をしているなと気づいた。友達にそう言ったら「わかる!倉持明日香とか、そんな感じ特有のやつ!」と言われて、まさか倉持明日香さんで返ってくるとは思わなかった。昔Tommy february⁶のバックダンサーがTommy⭐︎angelsとして活動していたことがあって、あの子たちの、成功したバージョン、たどり着くはずだった丘がここだったのか……と考えたりしながら見た。
青海駅直結のイマーシブフォートという閉館した建物が怖かった。
古くない廃墟って、不気味だね。
7月24日
好きだった本とか、影響を受けたものとか、よく質問されるし、答えるのも好きだけど、そんなことをすらすら答えられるのは表現者だけじゃないかと思う。初めて買ったCDをすぐに答えられるのはミュージシャンだけだ。そして、答えるたびに仮で出来てゆく物語があり、だから、直接的な影響を受けていない好きだったものについては忘れていってしまう。私は、『帰ってきた時効警察』の公式ムック本のことが、大好きだったのに。
9月にぴあフィルムフェスティバルで映画『渚のシンドバッド』をセレクトして上映する。観直して、選定理由を書いた。
これを観たのは20代のはじめで、そのとき、10代の時にずっと探していた作品だったと思った。高校のクラスメイトの青春群像。同性愛者の伊藤くん、伊藤くんが恋する吉田くん、吉田くんと付き合っている優等生、ふざけてるクラスメイト、そして誰ともつるまない転校生・相原。岡田義徳さん演じる伊藤くんとDIVAデビュー前の浜崎あゆみさん演じる相原、孤独な二人の少し秘密の男女の友情が本当に好き。
青春は一言多い、青春は一言足りない、青春は誰にも何も伝えきれない。心が体を伴って集まった教室も、二人きりの緊張感も、二人だけの開放感も、夏という季節がカメラになってかれらの姿を捉えるかのように焼き付けられている。かっこよくない。
7月26日
兵庫の豊岡、出石永楽館という芝居小屋で君島大空の演奏会。
君は、消えない線香花火。
(次回は10月22日に公開予定です)
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『こんな半日を宝石にして』、最新シングルは『WALK』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。初単著『孤独はかけがえないディスコ』、好評発売中!
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