ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年7月前半★

ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記2026年7月前半

 7月1日 

 
ピラティスのために起きる。起きるために朝に予定を入れている。

会場だけは確保しなければいけないと思ってどうにかして会場の確保に至った名建築ライブツアー「名建築でDIVAを」、もう2ヶ月後なのに告知が出来ていない。七月一日。今ミュージシャンはみんな告知が早くて(早くなったよね?告知遅い界隈にいただけか?)来年2月のデカ箱ライブとか告知するような有様なのに自分は間に合っていない。他人の告知は私を反省させる。他人を巻き込むことで、少しの責任感によって物事は回り出す。だからまずフライヤー撮影のために動いている。撮影は明後日なのに、衣装が決まっていない。YUHEIさんに「ピアノの発表会みたいな感じがいいんですが」と相談すると、本当に、完璧に、それしかないと思えるほどしっくりくるグレーに黒ドットのジャケットとパンツのセットアップを貸しますよと言ってくれた。フライヤーの撮影地は甲斐みのりさんに相談して「大田黒公園」という荻窪の公園の中の建築を紹介してもらった。ピアノのある場所が良かった。ここでライブは開催しませんという注意書きをフライヤーに入れてくださいと管理者の方から連絡が来て、ほんとそうだよねと思う。9月23日の名古屋公演の開催場所である「名古屋陶磁器会館」も甲斐さんが教えてくれた場所だ。みんなのおかげでなんとかしてこれているが、毎日今日からちゃんとしたい。明日はセットアップに合わせるブラウスを買いに行く。

夜、なんとか書けた歌詞を送ったらすぐに良い反応が来たので一安心。

 7月2日 

 
小雨。友人と共に遅刻し合いながら、朝から美術展に行く。その美術館に行くのは今日が初めてだと思い込んでいたけど、美術館の前にたどり着くと、重要じゃない記憶が蘇ってきた。何年か前に一人で来たんだった。でもその展示は私にとってなんにも面白くなかった。なんかの現象を数値化して、数字か信号かなんかを点滅させたり刻んだりしているやつを見せられると、どうしても物凄い速さで素通りしてしまう。特に暗幕の中に入れられてまで、その類のものを見せられると、勘弁してくれと思う。

そのあと銀座で一人になり、明日の撮影のためのトップスを探す。白いフリルブラウスが欲しい。白いフリルブラウスは自分に似合う洋服だと自負しているけど、実は最近は新しく買っていなかった。でも名建築では上品なフリルブラウスが着たい。COMME des GARÇONS GIRLとかいいのではと思っていた。この前も来たDOVER STREET MARKET GINZAでギャルソンのあらゆるラインの服を見てみる。可愛い服はあるけど悩んでしまって、渋谷PARCOへ移動。ここでもまたギャルソンを見つつ、あらゆるブランドの白ブラウス・シャツを見る……けどなんか悩んでしまって、もはやAngelic Prettyにしてしまおうかなどと思いつつ、ラフォーレ原宿へ移動。ずっと歩いてもう夕方である。助けてくれ。ラフォーレ地下一階のHEIHEIで、キーホルダーのガチャガチャを5回も回してしまう。店員さんに両替までお願いして。5つくらい形の種類があり、さらにそれぞれのカラバリがあるのに、アヒルのキーホルダーが4連続で出てきて、「そんな人初めてです」と言われたが、当たりなのかはよくわからなかった。

HEIHEIの目の前にある名前のわからないショップの一角で『NANA』コラボアパレルが陳列されている。いわゆるボンタンのように膨らんだバルーンシルエットの薄いライトブルーのジーンズが通路側に見えるように並んでいる。右足部分にはギターを背負った大崎ナナ、左足にはアイスを食べて歩く小松奈々(ハチ)がプリントされ、向かい合っている。両足を揃えると「NANA」になるロゴも中央に書かれている。さすがに試着してしまう。サイズ感もいいし、かなり似合ってる。何をやっているんだ。NANAとか着てる場合か。いや、NANAとか着てる場合だろう。私の人生の時間は、たまたま見つけたNANAとか着てる場合である。試着室の鏡を見ながら気づく。NANAはリバイバルされてファッショントレンドにもなっているけど、私が求めているのはNANAに出てきそうなスタイルではなく、「NANAを、着る。」「NANAを、まとう。」なのだ。大崎と小松を自分の身体の上で会わせる。何度も待ち合わさせる。これが私のやりたいファッションだ。買わなかった。

最終的に表参道のCOMME des GARÇONSに行って、noir kei ninomiyaのサイズもイメージもぴったりの白ブラウスを買った。結局正解はある。必ず見つけることができる。それを信じて、さまざまな可能性を検証することが大事。

 7月3日 

 
フライヤー撮影。写真の作画として萩尾望都や竹宮惠子を意識してもらうことはよくあるけれども、今回は中村明日美子作品みたいなイメージにしたいと写真家の平木希奈さんに伝えておいた。思い切って前髪を上げて固める。行くぜ大田黒公園。音楽評論家の大田黒元雄さんという人がいて、その人はドビュッシーやストラヴィンスキーを日本ではじめて紹介したらしい。撮影地は仕事部屋として建てられたもので、1900年製のスタインウェイのグランドピアノがあり、「触れなければOK」という約束で、カバーを外して蓋を開いてくださった。ライブツアーでピアノを弾くのは梅井美咲さんなのに、せっかくピアノがあるので、私が弾くフリをしてフライヤーを撮る。

きっと数年前のゆっきゅんであれば、ピアノの上手い美少年のペルソナが降りてきたことだろうし、そのつもりだったのに、なんか違った。どう見ても、クセの強いピアノ講師だった……名物講師。国内のコンクールで生徒たちが好成績を残している。この人に気に入られると、伸びる。滅多なことがない限りは褒めてくれない。私生活は謎に包まれている。レアチーズケーキを食べているのを目撃される。生徒の間では親しみを込めて下の名前を呼び捨て、一部では「魔王」と呼ばれているが、本人を前に馴れ馴れしく接せる者はいない。誕生日がサン=サーンスと同じ。若い頃、名門校に留学していた。神童だったらしいよ。名前検索したら出てきたもん、ほら。先生なんであんなに上手いのにプロにならなかったんだろう。コンクール歴、連弾ばっかりだよね。まってお父さん医者なんだって。え、お父さん政治家じゃなかった? ねえあいつバツイチなの知ってる? 絶対ないねそれは解釈違い。いや私のレッスンの先生が言ってたんだって! ほんとに。ほんとに? あ、やばい、先生来る足音する。静かに。

 
夜はオダウエダさんの単独ライブのため、撮影のままのメイクでルミネtheよしもとへ行く。オープニングで二人が歌っていて(というかラップ)、DIVAみの強い演出だったのが嬉しくて、終演後の挨拶でそう伝えると「取り入れました!」と言ってくださって光栄すぎた。オダさんは数々のコントがある中で、一度も人間の姿でコントに出て来なかった。

 7月4日 

 
ATEEZのサンでおすすめ欄が埋め尽くされている。

 7月5日 

 
ATEEZのサンでおすすめ欄が埋め尽くされている。Day2。

 7月6日 

 
ネイルサロン。今回はシンプルで落ち着いたネイルにしようとお願いしていたのに、ネイリストさん自身の左手の爪を見ていると、星などのキラキラしたパーツを閉じ込めたぷくぷくシールのようなネイルが可愛くて、「やっぱりさっき言ったのやめます。それ10本やってください」とお願いした。『孤独はかけがえないディスコ』の初校PDFが届く。

 7月7日 

 
スーザン・ソンタグの日記を占いのように開くと、本当のことだけが書いてあって、20代の自分による本当の傍線が引かれている。「感受性、、、は知性にとっての腐食土だ。感受性には構文シンタツクスがまったくない──だから顧られない」

 7月10日 

 
後輩Sを誘って、三菱一号館美術館に行ったのち、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下でエドワード・ヤン『海辺の一日 4Kレストア』。エドワード・ヤンを批判している人は一人しか見たことがないけど、実は私もピンときていなかった。2017年のクーリンチェのリマスター上映以降、9年間で多くの作品を見てきたが、「今回こそは」と思っても、自分の心それ自体を摑んでこない感じなのだ。取り立てて批判したくなるような作品群でもない。なんでなんだろう、大好きになれなくて、さみしい。すごいのはわかるんだけど。『海辺の一日』も集中できなかったので、さすがに諦めがついた。私はエドワード・ヤンがわからないのだ。エドワード・ヤンがわからないときは「みんなはわかるのに」という残念さが付随するものだけど、なんと、後輩Sも、たまたま同じ回を目の前の席で観ていた友達Mも、ピンと来なかったらしい。初日に来るほど楽しみにしていたのにね。エドワード・ヤンを楽しめない三人で、美味しいガレットを食べた。

ある作家に言われたことを思い出す。映画作品の良さがわからないときに、自分の感性に欠落を感じてしまうみたいな、そういう作品ってありますよねーって私が話していた。少しの間のあと、「先輩としてうるせえこと言わせてもらうね」と前置きして「ゆっきゅんがどんな映画についても書く、ニュートラルなライターならこれは違うかもしれない。でもゆっきゅんはゆっきゅんという名の下に文章を書いていくのだから、それはこっちの欠如ではない。欠如ではなく過剰なんだよ。自分の過剰さを受け止めてくれる器を持った作品じゃないってことなんだよ。そういう態度でいいよ」と言ってくれたのだった。なんだよ全然うるさくねえよ、メロついた。

 7月11日 

 
電影と少年CQのハッピーエンド公演ぶりに有楽町のI’M A SHOWに行く。根本宗子さんとチャラン・ポ・ランタンさんの音楽劇『超、Maria』。ギリギリについて、受付には私しかおらず、財布のお金が足りない。200円だけ足りない。座り込んでバッグの中を探す。有楽町って座り込んで小銭探す地区じゃない。ポーチの底からなぜか200円が出てくる。1曲目に間に合った。

去年全く関係ない演劇を観にいった時、カーテンコールで客席から演者に投げキッスを送り続けていて、よく見るとたぶん私の知っている歌手の方で、演者もその方の仕事仲間の方だった。投げキッスって、自然に出来る仕草ではない。キッスを投げ慣れていないとできない。特別な訓練が必要。だから私は今日、根本さんに投げキッスを送ろうと意気込んでいたのに、それを思い出したのは終演後の時間だった。瞬発的にキッスを投げられる、そんなバカらしいロマンチストになりたい。

もう単著の原稿は書けたような顔をして生きているが、実は「はじめに」だけが書けていない。あとがきは書かない予定。夜は青山月見ル君想フでルアンちゃんのソロライブがあるので、外苑前に移動して、冷たい飲み物に癒されながら、ドトールの二階でPCに向き合う。時間はたっぷりある。はじめにって何を書けばいいんだろう。どれくらい親切になればいいんだろう。自己紹介は苦手だ。どんな補助線を引けたらこの本を楽しんでもらえるだろう。自分でエッセイの順番も考えて、やっと全体像が見えてきたようにも思うけれど、摑みきれていない。筆が進まない。

外苑前の交差点を眺めていると、珍しく恩師の三浦哲哉先生からLINEが届く。今日は青山学院大学で表象文化論学会が開催されているらしい。そこに出席している渡邊英理さんがゆっきゅんに会いたいって言っているよという連絡だった。渡邊先生は私の出演したYouTube企画で著書『到来する女たち』を買わせてもらった研究者だった。裸眼で交差点の先を見る。青学がある。誰かに会いたい。私はもう今日は「はじめに」を書けないだろう。「今すぐ行ってもいいですか」と伝えて、大学に向かった。17時半。

ボトムスはグレーのスウェット、トップスはrurumu:の制服っぽいブラウス、Onitsuka Tigerのシルバースニーカーに、pehrtという韓国ブランドの超可愛いショルダーバッグ。基準は不明だが、自分なりに表象文化論学会に行ける格好をしていてよかった。

19時にはライブハウスに行かないといけなかったので、誰の発表を聞くでもなく、懇親会に参加するわけでもなく。三浦先生以外からすれば謎の存在。教室から出てきた渡邊さんに挨拶していると、学部時代に熱心に授業を受けていた石岡良治先生にも会えた。石岡さんは私の活動を少し知ってくれているらしかった。いつもの少し早口な喋り方で「見てますよ、意義深い活動を。まあもちろん全てが意義に回収されるのはいかがなものかという考え方は表象文化論の前提としてあるわけですが、でも意義は、あったほうがいいので」と笑いながら言ってくれて、私は笑った。細馬宏通さんに久々に会えたと思ったら一言目が「行ってますか、カラオケは」だった。行ってますよ、カラオケは。

私は、先生方が書く、あるいは読むような書籍を、時間を使って集中すれば読むことができる頭を持っているのに、今はもったいないことをしている。ずっと読書に憧れている。もっと読めばいいといつも思う。

ルアンは堂々としていて、素晴らしかった。

 7月12日 

 
Zavageなんか泣ける。

(次回は10月8日に公開予定です)

 


ゆっきゅん
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『こんな半日を宝石にして』、最新シングルは『WALK』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。10月5日に初単著『孤独はかけがえないディスコ』を刊行予定!
@guilty_kyun Instagram @guilty_kyun YouTube @guilty_kyun

芦沢 央さん × 杉江松恋さん「スペシャル対談」◆ポッドキャスト【本の窓】
TOPへ戻る