◎編集者コラム◎ 『付添い屋・六平太 鵺の巻 逢引き娘』金子成人
◎編集者コラム◎
『付添い屋・六平太 鵺の巻 逢引き娘』金子成人
"付添い屋"って、一体どんな職業なのでしょう。聞いたことがありますか?
なんと江戸時代には、家柄の良い奥さんや娘さんたちが、うっかり漏らしてしまったオナラの犯人?役を買って出る、"屁負比丘尼(へおいびくに)"という付添いのお仕事があったそう。
本作に登場する付添いの仕事内容は、もちろん、"屁負比丘尼"とは違います。
裕福な商家の子女が花見や芝居見物などに出かける際、案内と警固を担う、というもの。
仕事を請け負うのは主人公の侍で、その名を秋月六平太。二枚目にして、しかも、剣術の達人なのです。
セレブな町娘とイケメンの剣豪とくれば、すぐに、「その場限りのラブロマンス!」なんて、大いに盛り上がりそうですけれど、残念ながら、シリーズ第1巻『龍の巻 留め女』から、ずっと情を通わせてきた髪結い女・おりきという、粋で美人なヒロインがいるのでした。
久しく恋仲が続いているふたりの行く末も目が離せませんが、12巻目となる本作では、養子に出した六平太の一人息子で、江戸に出てきた穏蔵の存在が気になるところ。
長年離れて暮らしていた穏蔵が、音羽の顔役・甚五郎の身内になって働きはじめたのはいいものの、ある悩みごとを聞いてほしいと六平太のもとへやって来ます。
大きく成長した一人息子との微妙な間合いに、いまだ戸惑い、どうしても素直になれない六平太は、穏蔵にどう応えるのか──。
そんな若き父親の主人公が、なんとも可愛らしく見えてしまうのは、さすがは、1997年に第16回向田邦子賞を受賞した金子成人先生。
ドラマ時代劇『水戸黄門』『鬼平犯科帳』などを手がけた、伝説の脚本家が書き下ろすのですから、恋愛に人情にチャンバラにと、盛りだくさんの楽しさで、ページをめくる手が止まらなくなること請け合いです。
ついつい徹夜してしまうのを、覚悟しないといけないかも。
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