ゆっきゅんの毎日今日からちゃんとしたい日記 ☆2026年6月前半★

6月2日
「人をダメにするソファ」というみんなが大好きなソファあるいは言葉があって、自由自在にモジられている気がするけど、昨日は「なんと、ソファをダメにしたおばさん」ってポストを見て、さすがに友達に共有した。今日もLINEをしている。私はスクリーンタイムが10時間くらいあって(減らしたい)、友達も(会社員なのに)8時間くらいある。私たちはまだXを見ている。私たちはまだSNSを好きでいる。だからXってほんとに「私をダメにするおばさん」なんだよね。そして私たちは20年後、新しいSNSをインストールし続ける、サブ垢のある、スクリーンタイム23時間のダメなおばさんになろう、残り1時間はネジ外すゲームやるんだって話し合った。
おばさんが、鍵垢だけで、フォローしてるおじさん。とか架空のものに思いを馳せていたら自然な流れで大喜利のようなものが盛り上がってしまって、25時半に通話が始まって2時間、架空のおばさんについての架空の話題だけを語り合った。私はなぜか寝ながらではなく、キッチンに立って話していた。女子高生みたいにずっと笑っていた。しっかり水泳したくらい疲れた。寝る前には、10年ほど変更されなかった友達のアカウント名が「些細なおばさん」になっていた。今夜痩せたと思うって言っていた。近況は知らない。
31歳、内輪ネタですらない、意味不明な2時間の会話。
6月3日
先週は母と姉とサンリオ展に行った。70年代の『詩とメルヘン』や少女マンガ雑誌『リリカ』そして今も続く『いちご新聞』に私の好きな夢と憧れと祈りが詰まっていて、その頃のことをもっと知りたくなった。2024年に出版された『サンリオ出版大全 教養・メルヘン・SF文庫』を買って読みはじめる。60年代は政治の時代、80年代は消費の時代、だと言われる中で、語られづらい70年代という時代を、サンリオの出版事業から捉え直す試みらしい。かっこよ。すごく価値のある研究だし、知らないことばかりで、読んでいて面白い。
サンリオの発信する夢、優しい気持ち、信じる心は、厳しい現実から逃げるためのものではなく、生き抜くためのものなのだと思う。反戦のメッセージを、女の子たちに向かってどう表現して伝えるか。この前山梨に出来たらしい「山梨いちごの王さまミュージアム」にも今年行きたい。
いい加減、来週末に韓国に行くまでには単著の原稿を書き上げなければいけない。別に締め切りは来週末ではなくて、いつだっただろう。5月は生誕前って言い訳があった、4月も作詞や制作の言い訳があった。もう、やるしかないのだ。マネージャーの語彙が「締め切り」から「デッドライン」に変わっている。
ラジオの後、約束の丘で単著の原稿を集中して何時間も書いていたら、隣席にたまたま君島大空が現れた。君島はヘラヘラと笑って私の写真を撮る。私はなんでだよーどーゆーことだよーと早口で、プライベート・スーパースターが現れた姿を写真と動画に収める。送られてきた自分の写真を見てみると、椅子に浅く座って背もたれにでろーんと倒れて足を開いて伸ばしていて、姿勢が感じ悪すぎだった。まだ夕方なのに真夜中の顔をしていた。
君島が来てから40分くらい執筆を続けて、先にカフェを出る。私がレジに向かうと、君島はすぐに店員を呼んだ。来た時は喫煙席が空いてなかったから渋々たまたま私の隣に通されたわけだが、彼が座っていたいのは本当は喫煙席だ。真夜中みたいな顔で頑張っている友達を隣で応援するために、喫煙席に空きが出てもしばらく、禁煙席で隣にいてくれたのだ。君島が喫煙席に荷物を持って歩いて行って座るのを、レジの近くから見届けた。
代官山へ向かう。Rochelle Jordanの来日ライブに行く。開演前のDJがパブロ・ヴィターみたいにかっこいい人だったけど名前がわからない。1曲目、Rochelle Jordanが右から入場すると、舞台左端の壁向きに設置されたスタンドマイクまで歩いてゆき、壁の方を向いてDIVAのイントロフェイクを始めていた。私は基本的にお客さんの方を見てステージに立たないといけないと思っているので、そんなカッコつけ方もあるんだなと感心した。音像がこれくらい統一されていても全然観客は飽きないのだなーと思ったりした。あとダンスミュージックでもボーカリストがずっと激しく踊ってなくてもいいんだよなーってことも確認した。本編最後にパフォーマンスされた『Sweet Sensation』って曲がすごくよかった。
私が年内に横向いてフェイクを歌ってたら、やってんなって、笑ってほしい。
6月6日
明後日に初回を収録する対談連載のために、続けて映画を観た。ジョン・カサヴェテス『オープニング・ナイト』に関連しうるような「女優」の映画たち。ジャンヌ・モローが監督した『リュミエール』、ビリー・ワイルダー『サンセット大通り』、今敏『千年女優』、ジョン・カサヴェテス『オープニング・ナイト』、ルイ・マル『私生活』、そして澤井信一郎『Wの悲劇』。
『千年女優』はかなり男性観客の幻想ぽさが強く、「女性(ここでは女優)には忘れられない相手がいて、いつまでもその人のことを思い続けていて欲しい」という願いを叶えたアニメーション映画だった。なんなんだろうあの願いは。元カノがいつまでも自分のことを好きでいると思い込みたい気持ちみたいなことか。
6月7日
笑いと怒りと輝きのコント歌劇団。振付演出家の竹中夏海さんが発足させた「紫芍薬歌劇団」の初回公演当日。ないものが、生まれる夜。歌って踊って、笑い飛ばす。
昼はRachelさんと竹中さんと私の三人でトークイベント「我々は安心できるエンタメが作りたい」があった。出番前の楽屋でRachelさんが「今日は汗かくからTシャツ着ようかなー」と言った。私は竹中さんに昼公演のトーク内容や詳細を聞いていなかったので「もしかして私が知らないだけで、今日みんなで汗かくようなことやりますか?」ってRachelさんに聞いたら、「ごめん、急に玉入れとかしないよ。汗は私の自律神経の問題だから」って言われてホッとした。自分だけに知らされずに玉入れとか長縄跳びとか綱引きとかそういった「レク」があったらどうしようかと思って、汗かいた。自律神経を大切にしたい。
トーク中に竹中さんは歌劇団の立ち上げを桃太郎にたとえて話していた。たしかに。
6月13日
韓国のホテルに到着した。入り口には造花のひまわりがアルミホイルでできたような花瓶に入って左右に飾られていて、低い電光掲示板には緑に光るハングルで「ようこそ」的なメッセージが流されている。韓国慣れしているYUHEIさんに安いホテルを取ってもらった。入り口すぐ近くにはエントランスというかフリースペースらしき空間があり、壁紙の上方にはソウルの街の景色を写した写真が貼られ、下半分はファミレスのソファのように背もたれになっている。社長室のようなテーブルに、他人の実家のようなゴブラン織りのティッシュケースが置かれて、アンティーク調のソファが集まっている。奥には白いキッチンカウンターにシンプルなカウンターチェアが三つ。物足りないシャンデリアが点けられているすぐ後ろには、電気を点けたらやかましいほど輝きそうな、ビーズカーテン系の四角いシャンデリアが吊るされている。このフリースペースに置かれたひまわりの造花には、ポピーの造花も交ざっている。どうやったら出来上がるのか、これを出来上がっているものとして受け止めることが果たして正解なのか、さっぱりわからない空間だった。うまく説明できないが、まず、うまく見ることもできないのだ。でもボロさを言いたいわけではなく、怪しさでもない。雑多ならば、雑多なりの美学がある。それも違う。人工的で、整っておらず、少し不穏で、何を基調ともしていないけれども、一つ一つのアイテムは、選ばれてここに集まっていると伝わる。受け取りきれないが、無視できない。知らない街のリサイクルショップに来たのかと思った。
フライドチキン屋で壊れたタッチパネルと格闘していたらChim↑PomのエリイさんからLINEが来て、今近くにいるから遊ぼうよとのことだった。フライドチキンを食べ終えた私たちはエリイさんが送ってくれた住所付近に着いて、YUHEIさんが飲みたかったスイカジュースを頼んで、エリイさんからの連絡を待った。スイカジュースを受け取った瞬間にエリイさんから電話がかかってきて、大きな犬の像の近くだよと言われて歩いていくと「フゥ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」とはしゃいでいる声が電話越しよりも大きく道端から聴こえてきて右の方を見る。横断歩道の向こう側にエリイさんと仲間達4名がいた。韓国に住んでいるご友人Fさんたち3名と、今回一緒に韓国に来ている日本のご友人を紹介してくれた。Fさんの案内で、少し歩いて、ネオンの照明が可愛いDJバー(でもこの日はDJとかいなかった)に辿り着いた。雑居ビルの3階にあって、明らかに初韓国の1日目の到着直後に辿り着けるスポットではなかった。
エリイさんが話すことは、全てすごい。15年ほど前、春に川沿いの桜並木を眺めて歩いていたら、ものすごく長く伸びている桜の木があって、そこにあったマンションの2階のベランダまで届くほどだったらしい。そのとき、桜が侵入しているベランダでタバコを吸っていた男の人が、Fさん。エリイさんは「そこから桜見たいので行っていいですかー」とか言って、部屋に通してもらって、そのまま友達になったらしい。桜の木の先にFさんの部屋のベランダがあったから出会って、不思議な縁だよねー、というニュアンスで言っていたけど、たしかにその側面もあるけども、道端から2階の知らない人に向かって声をかけてそこに行く勇気の方が、ジャンプが大きいように感じる。エリイさんは疑いのない目と結論みたいな声をしている。
そのビルの屋上では、サイネージでできた屛風みたいな、大きな滝の絵が光っていた。エリイさんは滝の光に照らされながら「もっと、若い頃に力士と付き合ったりしておけばよかった。私は人生を無駄にしている」と言って、私と写真を撮った。
Fさん以外の韓国の友人二人はそのあと帰って、私とYUHEIさんとエリイさんと日本からのお友達の4名は、Fさんの車に乗せてもらった。面白い人がいる場所で流れに身を任せていると、何かが起き続ける。あまり観光先で人の車って乗れない。漢江という川を見に行こうって話だったけど、Fさんが一緒に住んでいるパートナーとのお部屋にお邪魔することになった。彼氏の知らない友達たちが急に家に来ても大丈夫な部屋ってすごすぎてどういうことなんだろうと思ったけど、すごすぎるくらいおしゃれな部屋で、もはや部屋の中にいるのか、おしゃれな部屋の写真を見ているのかわからなくなるほどだった。どこを切り取ってもこだわりが詰まっていて、文化的で、固有の基準があり、抜け感もあって、ここに流れてほしい空気の色をひとつひとつの家具や要素が作っていて、尊敬した。紅茶を淹れてもらってゆっくりと時間を過ごす。もう24時前だった。
Fさんのパートナーを部屋に残し、5人で歩いて漢江の見える丘まで行く。今日見ることになるとは思っていなかった美しい景色。丘を降りる。私は一番後ろにいて、4人の後ろ姿を写真に撮ってみると、友達みたいでなんかいい。私は謎メンが好きなのだ。目的地があるのも知らないまましばらく川沿いを散歩していると、川までの広い階段がある場所に辿り着き、その夜中の階段には京都の鴨川のように多くの人々が座って楽しそうに喋っていた。花火大会の場所取りをして待っているみたいな在り方だけど、目の前にあるのは初夏の川だった。みんなで集まる場所なんだなあ。ここがFさんの見せたい目的地だったことをやっと理解した。まっすぐ川に沿ってずっと歩いていたのを離れてタクシーでホテルに帰ろう、とみんなが話している中、私はトンネルの中から現れた三人組に気を取られる。
「ごめん、私、三人組が手を繫いでいると泣いてしまうんですよ」
自分の口からはじめて聞いた言葉に、そうだったんか、と思う。そうだった。三人で手を繫ぐって相当なことだよ。手は繫がないと繫げない。三人組が、24:40に、街から川に向かって、手を繫いで、笑顔で歩いていた。自分が今どこにいるのかもよくわかんないまま、かけがえのない光景を目に焼き付ける。これは三人組の性別の内訳がどうであっても、どうとでも泣けるって感じがする。正面から現れたその手繫ぎ運動体が、自分たちの横を通り過ぎ、川の方に辿り着くまで、その後ろ姿が見えなくなるまで見届けてしまう。今夜、これを見に来たのだ。韓国に来てよかった。
(次回は8月27日に公開予定です)
DIVA・作詞家 1995年岡山県生まれ。青山学院大学大学院文学研究科比較芸術学専攻修了。2016年、ルアンとのサントラ系アヴァンポップユニット「電影と少年CQ」を結成。2021年よりセルフプロデュースでのソロ活動「DIVA Project」を本格始動。アーティストとして楽曲を発表するほか、作詞提供、コラムや映画評の執筆など活躍の幅を広げている。アルバムに『DIVA YOU』『生まれ変わらないあなたを』、最新EPは『こんな半日を宝石にして』、最新シングルは『WALK』。文化放送「武田砂鉄 ラジオマガジン」水曜後半レギュラー。
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