「読メル幸せ」特別企画 田島芽瑠の一問一答!
「読メル幸せ」特別企画
田島芽瑠の一問一答!
大人気連載「読メル幸せ」でおなじみのHKT48・田島芽瑠ちゃんが、『小説王』の文庫化を記念して行われた早見和真さんと森絵都さんの対談時に、質問を寄せてくれました。
早見和真さんの『小説王』と森絵都さんの『カラフル』は、芽瑠ちゃんが「読メル幸せ」でも取り上げている大好きな作品。物語をつくる難しさや読書の魅力を、ズバリ訊いちゃいます!
Q. おふたりは初めて物語を書かれたのがいつだったか、覚えていらっしゃいますか?
森 私は小学3年生のとき作文帳に書いた、3ページくらいの冒険小説が初めての物語です。これはまだ手元に残っているんですよ。
早見 僕もまだ持ってます。作家デビューしてから、幼なじみのお母さんから「和真くん、これを昔おばちゃんにプレゼントしてくれたの、覚えてる?」と渡されたのが、幼稚園のころに書いた物語でした。それが内容を読み返してみると、まるっきりレオ・レオニの『スイミー』で。女の子が持っていた赤い風船が飛んでいってしまうんですが、空には強風やカラスなどたくさんの敵がいて、風船は怖くてえんえん泣くんです。すると、どこからともなくいろんな風船が飛んできて、赤い風船を目にして大きな鳥の姿をつくって立ち向かう、という。その後、国語の教科書で『スイミー』を読んだとき、本気で「パクられた!」と思いましたから(笑)。
森 ということは、完全にオリジナルとして書いたものだったわけですよね。それって素晴らしい才能じゃないですか。
早見 真相はわかりませんけどね。じつは以前にどこかで『スイミー』の話を見ていて、無意識に影響を受けたのかもしれませんし。でも、あのときは本気で怒ってました。
Q. おふたりは小説だけでなく、絵本も手がけられていますが、作風や内容など、普段の執筆とはどのような点が異なりますか?
早見 僕はちょうど、初めての絵本『かなしきデブ猫ちゃん』が出たばかりなのですが、使う脳みそがまったく違うことを痛感しました。執筆中はとにかく、子供たちが読んだときにいかに気持ちよくなれるか、どう表現すれば心に刺さるかということを、ずっと考えていました。
森 私は、映画が監督のものであるように、絵本は絵を描いている画家さんのものと考えているんです。だから、どうすれば面白い絵を描いてもらえるのか、私自身も楽しみにしながら書いています。
早見 それでいうと僕は、絵で伝わることはわざわざ文章で説明しないように意識していたつもりなんですが、これが本当に難しかった。絵を描いてくれているかのうかりんさんの足を引っ張っているという気持ちをずっと拭えませんでした。
森 そうですね。最終的に絵とセットになってどうなるかという、完成形は常にイメージしているかもしれません。
Q. 私は『小説王』を読んでいて、作家の豊隆と付き合うことになる晴子の存在がとても印象的でした。ほかのキャラクターにしても、すごく女の強さが表現されているように感じたのですが、早見さんは何かそういう原体験をお持ちなのでしょうか?
早見 いざというときに肝が据わっているのは、やはり女性のほうですよ。僕自身、恋愛とかそういう面ではサバサバしてると思うんですけど、仕事では執着心が強い方だと思うので。
森 私は嫉妬も執着もほとんどないですね。年をとるにつれて、生産的でない感情はさくっと切って捨てられるようになりました。「自分は自分、人は人」と。
早見 それもまた、女の強さなのかもしれませんね。でも、小説を書いていて苦しくなることはありませんか?
森 もちろんありますよ。というより、たいてい苦しんでいるかも(笑)。
早見 僕も同じです。たまに「書くのが楽しい」と言う作家さんもいるじゃないですか? 僕にはまったくわからない境地で、心の底からうらやましい。
森 楽しいと思えるのは、1年のなかでせいぜい2週間くらいですよ(笑)。でも、それがあるから、こうして書き続けていられるのかもしれません。苦しみの原因はいろいろありますけど、締め切りが近づいているのにいいかたちにならないとか、単純に燃料切れとか……。
早見 生活と執筆が折り合わないことってないですか? たとえば書かなきゃいけないのに夫婦ゲンカをしてしまって気持ちをそちらに持っていかれたり、なんてことは。
森 私、私生活での「動揺」って、創作脳への刺激になるんじゃないかと思うんです。実感としてですけど、心が不安定であるほうが執筆に集中できるような。
早見 僕は書いても書いても、自分が目指すところに到達しない、目標を上回れていないような気がして、落ち込んでいます。だからこそここまで続けてこられたという気もするんですけど。
Q. 作家の皆さんが、魂を削るようにして作品を書き続けている一方で、最近はますます10代の人が本を読んでいる姿を見かけなくなりました。だからこそお聞きしたいのですが、おふたりが考える読書の魅力はどんなところにありますか。
森 子供の頃、周囲の大人から「ためになるから読んでおきなさい」とよく本を勧められていましたが、大人が“ためになる”と思っている部分が、子供にとって面白い部分であるとはかぎりませんよね。だから、ためにならなくてもいいから、純粋に自分が心から面白いと思えるジャンル、内容の作品を読めばそれでいいんですよ。
早見 僕がいつも思うのは、10代の本離れが進んでいるのであれば、逆にたくさん読めば簡単に周囲を出し抜けるじゃん、ということ。自分以外の人間の視点を得るのに、物語以上に有効な手段はないと思っているので。面白い物語に没入して、結果、何かが得られるなんていいことばかりじゃないですか。
森 自分の頭でものを考える力、他人を思いやる想像力、いつもと違う角度から物事を見る力──。物語を通して培われるものはたくさんありますからね。面白いと思う物語を読み続けるうちに、そうした力が自然に身についていくはずです。ぜひ、自分が興味を感じる本を、ためらわず手にとってほしいと思います。
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