◎編集者コラム◎ 『新・口中医桂助事件帖 志保のバラ』和田はつ子
◎編集者コラム◎
『新・口中医桂助事件帖 志保のバラ』和田はつ子
人気シリーズだった「口中医桂助事件帖」の続編が登場です!
このシリーズの魅力は、主人公の藤屋桂助、志保、鋼次の個性あふれる三人の登場人物にあるでしょう。桂助は、江戸時代の歯医者である「口中医」です。長崎で修業をして、〈いしゃ・は・くち〉を開業しました。腕の良さが評判となり様々な歯の悩みをもつ人々が訪れ診療をしていく中、周辺で起きる事件の数々を解決する「名探偵」でもあります。出生にまつわる秘密は、徳川幕府を揺るがす事態にもなったのでしたが……。そんな桂助の仕事仲間となったのは、志保と鋼次でした。志保は医師の佐竹道順の娘で、植物の栽培が好きで、薬草などを植えていた桂助の菜園の世話をはじめ、手伝いに来ていました。鋼次はかざり職人ですが、桂助の親友となり房楊枝作りをするようになります。
シリーズ最終巻「さくら坂の未来へ」では、桂助は夫婦となった志保、そして鋼次と妻の美鈴、娘のお佳とともにアメリカで最新治療を学ぶために旅立ちました。本作では、時代が明治となり皆が帰国する所から物語が始まります。桂助は、歯を抜かなくても治せる治療と痛みの少ない治療を広めたいと思っていました。そのための大きな足踏み式の虫歯削り機を購入して持ち帰っていました。
船上での事件を解決し、〈いしゃ・は・くち〉に戻ってきた桂助と志保。養父の藤屋長右衛門や妹のお房、岡っ引きだった金五、入れ歯師の本橋十吾たちとの懐かしい再会を果たします。金五と本橋からは事件についての相談が持ち込まれ、桂助の真価が発揮されます。
虫歯削り機は機械慣れしていない人々からは恐れられ、痛みを感じさせなくするための麻酔に使われるクロロホルムは高価で入手が難しいことに悩む桂助。そんなころ、桂助のもとに口中の痛みで話ができないという患者がやってきます。さらには、評判を聞いたあの一橋慶喜が家臣の渋沢栄一と治療に訪れることに。果たして桂助の理想は叶えられるのか?
今回は、これまでは控えめだった志保の存在が目立っています。アメリカで過ごした経験が大きかったのかも!?
明治維新の東京での、桂助たちの活躍をお楽しみください。
──『新・口中医桂助事件帖 志保のバラ』担当者より