むちゃぶり御免!書店員リレーコラム*第2回
本を読み終わるまで読書休暇をとっていいよ、仕事も家事も育児もお休みでいいよ、といわれたときに読む本
積読から解放される日は来るのだろうか。読むペースをはるかに超えて買ってしまうので、未読の本が溜まり続ける一方だ。いつか読む、と思って買ってもそのまま2~3年経過して気が付けば文庫化されていたりする。あぁ時間がほしい……。そんな時、ふと天からの声が聞こえた。「読み終わるまで、読書休暇をとっていいよ」。いまだ。いましかない。とっておきの本を読むチャンスがやってきた!
単行本で発売された当初、2段組で500ページを超える辞書のような見た目に怯んで気になりつつも手が出せずにいたチママンダ・ンゴズィ・アディーチェ『アメリカーナ』をご紹介したい。
ナイジェリアから渡米した女性イフェメルを待ち受けていたのは、差別や格差という現実の壁だった。生まれて初めて自分が黒人であると知り、移民としての扱いを受け、圧倒的なまでの格差に打ちのめされる。作者のアディーチェもまた、19歳で渡米して小説を書き始めていることから、この物語には彼女の半生や経験談も盛り込まれているのではないかと思う。
長い歳月の中で少しずつアメリカの価値観に染まりながらも、ブレない強さと知性を持つイフェメルがとても魅力的だ。また、彼女には祖国へ残してきた恋人オビンゼがいた。最終章は、故郷を離れ異文化に染まった女性が、恋人と再会するまでのラブストーリーとしても読むことができる。
読み終えるには時間が必要な、深く考えさせられる本だ。じっくり立ち止まって味わってほしい。
『アメリカーナ』(上・下)
チママンダ・ンゴズィ・アディ-チェ
くぼたのぞみ=訳
河出文庫
池田まさたか(いけだ・まさたか)
紀伊國屋書店ゆめタウン下松店に勤務。海外文学を読みながら酒を飲むのが好き。趣味は畑と釣り。
【次のお題】
結婚や出産など、人生の節目を迎えた友人にエールとして贈る一冊
【答える人】
TSUTAYAウイングタウン岡崎店 中嶋あかねさん
本連載は、「〇〇な時に読む本」というお題で、書店員の皆様に「推し本」を紹介していただきます。〇〇部分は、前号執筆した方が、次の執筆者に対して提案します。
〈「STORY BOX」2022年10月号掲載〉