◎編集者コラム◎ 『ランナウェイ』ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹、大谷瑠璃子

◎編集者コラム◎

『ランナウェイ』ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹、大谷瑠璃子


ランナウェイ

 
「巧すぎる……」 

 最初に本作の翻訳原稿を読み終えて、呆然。しばしフリーズした後、思わず恍惚として呟いてしまいました。 

 アメリカの作家、ハーラン・コーベン58歳。日本でもヒットした「マイロン・ボライター」シリーズでエドガー賞、シェイマス賞、アンソニー賞の三賞を受賞した初の作家であり、映画化もされた2001年の『唇を閉ざせ』以降、ほとんどの作品がNYタイムズ紙のベストセラー・リストで初登場1位を記録。作品は世界で7500万部以上を売上げ、45の言語に翻訳、さらに最近はネットフリックスとコラボし、『イノセント』『ステイ・クロース』など過去の人気作を次々に映像化……。誰がなんと言っても、間違いなく米国エンタメ界のど真ん中にいる作家です。

 コーベンさんの作品を編集させていただくのは2年前の『偽りの銃弾』に続いて2作目。その時も「すげえっ!!」「何コレ、巧すぎない?」と唸りまくったのですが、本作『ランナウェイ』を読み終えた時の驚きと喜びは、その時をさらに凌ぐものでした。

 何でそんなに巧いの?何でこんな凄い話が書けちゃうの!?教えて、コーベンさん!!と、原書のカバー(※上の写真参照のこと)にデカデカと掲げられた写真の肩を揺すってみたくなってしまうほど(このカバーのインパクトも相当なものですが)。

 本作の主役は、NYマンハッタンに妻子と共に裕福に暮らす金融アナリストのサイモン。大学の学生寮に入っていた長女ペイジは、悪い男につかまり薬漬けにされて失踪中。素人の彼なりに必死で情報を集めて娘を捜しているのですが、その娘をやっと見つけた冒頭のストロベリー・フィールズのシーンからして秀逸。のっけから、いかにも現代社会の病理、という感じのトラブルに巻き込まれ、もういきなりそこで心をぐわしっ!と鷲づかみされてしまうのです。

 とにかくまずは読んでいただき、構成、キャラクター造形や心理描写、伏線回収の見事さetc.…とコーベンさんの凄みを味わってもらいたいのですが、その前に、担当編集としてぜひこれは!という作品の魅力2点をお伝えしたいと思います。

 ひとつめは、圧倒的なリーダビリティの高さ。今回のデザインをお願いしたアルビレオさんからもゲラを読んだ後に言われたのですが、「途中で読み返す必要がない」。翻訳ミステリを読んでいて、「あれ?この人、誰だっけ?」「これって何のことだっけ?」となって、前に戻ってしまうことってよくありませんか?本作の場合、それがほとんどない!と断言できます。とにかく最後までするするするすると読めてしまう。

 そしてもうひとつは、今回解説を書いて下さった冲方丁さんも絶賛している「公正(フェア)」さ。翻訳の田口俊樹さん、大谷瑠璃子さんとも常々話していますが、ミステリ小説として、コーベン作品は正真正銘「フェア」です。この姿勢を貫く潔さには敬意を感じますし、それでいて極上のエンタテインメントに仕上げているその手腕には、感動を憶えます。本当に凄い作家としか言い様がありません。

 日本でも、もっともっと読まれていい作家だと自信を持ってお薦めできます。ぜひぜひ、手に取って読んでみてください。娘のいるお父さんなら、きっと泣きますよ。

──『ランナウェイ』担当者より
  

ランナウェイ

『ランナウェイ』
ハーラン・コーベン

訳/田口俊樹、大谷瑠璃子

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