◎編集者コラム◎『偽りの銃弾』ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹、大谷瑠璃子
◎編集者コラム◎
『偽りの銃弾』ハーラン・コーベン 訳/田口俊樹、大谷瑠璃子
「エドガー賞、シェイマス賞、アンソニー賞という米国の推理小説作家に贈られる主要三賞を受賞した初の作家」。「近著8作はすべてニューヨークタイムズのベストセラーリストで初登場1位を記録」。「作品は世界で6千万部以上を売上げ、43の言語に翻訳」……と、どこをとっても正真正銘の売れっ子作家ハーラン・コーベン。日本でもスポーツエージェントの世界を描いたミステリー〈マイロン・ボライター〉シリーズで根強い人気を誇る作家です。
そのコーベンの最新作『偽りの銃弾(原題:FOOL ME ONCE、田口俊樹・大谷瑠璃子 訳)』は、軽妙な語り口のボライターシリーズとは打って変わって、かなりシリアス。謎が謎を呼び、疑念が疑念を呼び、読めば読むほど深みにはまっていきます。
ある夜、目の前で夫を何者かに射殺されたイラク帰りの元軍人マヤ。未亡人となり、2歳の娘を案じて子ども部屋に設置した隠しカメラに写っていたのは、2週間前に殺されたはずの夫。まさか夫は生きていたのか、それとも誰かの罠か、あるいは戦場のPTSDによる幻覚か。そこからマヤの真相究明が始まるわけですが、最後まで新たな疑念が次々と出てきて、本を置くことができなくなってしまいます。
本作の読みどころはたくさんありますが、担当編集者からのお薦めポイントは4つ。まずはミステリー小説としての巧さ。特に、伏線の回収が抜群に巧いということ。そしてふたつ目は、ヒロインのハードボイルドな生き方。タフでクールで皮肉屋なマヤですが、娘や身内に対する愛情もまた深い。愛する者を守るためなら何でもする、という覚悟にぐっときます。みっつ目は、読後感の良さ。一見、イヤミス風の雰囲気満々ですが、最後の最後に浄化させられ「もやっと感」はいっさい残しません。そして4つめのポイントは、デビュー作からのコーベンの愛読者という堂場瞬一さんによる解説です。コーベン作品への愛と、同業者ならではの鋭い視点から本作がいかにすごいかが綴られ、こちらも読み応えたっぷりです。
翻訳ミステリーファンからは「新作が早く読みたい」という声があちこちであがっていたというコーベンの『偽りの銃弾』。作品に惚れ込んだジュリア・ロバーツによる映画化も進行中です。ぜひ、その目でこの「すごさ」を確かめてください!
──『偽りの銃弾』担当者より