◎編集者コラム◎ 『恋文横丁 八祥亭』立川談四楼

◎編集者コラム◎

『恋文横丁 八祥亭』立川談四楼


「恋文横丁八祥亭」編集中

 今回の作品の企画がスタートしたのは、6年ほど前のことでした。私が担当する作家さんの単行本を、談四楼師匠が週刊誌の書評で取り上げてくれたのがきっかけです。
 師匠は立川談志さんの一番弟子として知られる人気落語家であると同時に、「石油ポンプの女」『ファイティング寿限無』などの著作も持つ作家としても著名です。
 書評のお礼かたがたお会いしたときに、小説を書いていただけませんかとお願いしたところ、快諾していただきました。

 当初は、落語をベースにした時代小説連作というコンセプトでスタートしました。しかし、毎日のように社会の矛盾を痛快に斬るツイートを発信してフォロワー13万人! を誇っている師匠。せっかくならば、いまの世相を盛り込んだ小説連作のほうをを書いてみたいと、執筆の方向性が変化していきました。ただ、ご多忙な師匠のこと、完成までにかなりの年月がかかってしまうことになるのですが……。

 舞台は、師匠が馴染みの渋谷。ちょっとレトロな元恋文横丁あたり。若造はお断りの大人の居酒屋。粋な女将と、料理上手な若女将。そんな店に飛び込んでくる難事件の数々。
 常連客の落語家は訳ありの経歴。若女将に頼まれると断れず、難事件を追っていく……。
 打合せを続けるうちにそんなプロットが出来上がっていきました。

 そして取り上げるテーマは、独居老人、外国人労働者、地面師、親権裁判、コスプレ、臓器移植……。まさにいまの日本の世相が小説の中に描かれていきました。全5話の作品の中に通底しているのは、大変な世の中を頑張って生きている庶民への熱いエールです。どの作品も、名落語家である師匠の情に溢れた優しい筆致で、ほろりとさせられること必至です。

「陳のオヤジとお母さんは命の恩人さ。戦前に大陸からやって来て苦労しただけのことはある。天涯孤独の子どもに優しくしてくれてね。いま思えば様々な差別も受けたろうにいつもニコニコしてて、だから尽くしたね。働いたな」(「危うし中華共楽」より)

 また、今作品の中で、興味をそそられるのが、出てくる料理の美味しそうなこと。
 常連のひとりになりたい。そんな気持ちにさせられます。

「あの、いまマゴ茶と聞こえましたが、それは……」
「鮪を胡麻醤油に漬けてそれをオマンマに乗っけ、お茶をかけるの。鮪のマと胡麻のゴでマゴ茶」(「消えた銀二郎」より)

 そして、嬉しくありがたいことに、オビには、師匠と知己のある、小泉今日子さんが推薦文を寄せてくださいました。
 オビスペースの都合上、一部しか載せるせることができませんでしたが、いただいたコメントの全文を今回特別にご紹介いたします。
 小泉今日子さん、本当にありがとうございました。

「人の情けの温かさ。私はこういう物語に飢えていたのかもしれない。
だって、今の世の中どうなっちゃってるの?と思うことのほうが多いから。
読後、心の中の八祥亭で常連さんたちと乾杯しました」

(小泉今日子さん 推薦コメント)

  
──『恋文横丁 八祥亭』担当者より

恋文横丁 八祥亭

『恋文横丁 八祥亭』
立川談四楼

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