◎編集者コラム◎ 『十津川警部 仙石線殺人事件』西村京太郎
◎編集者コラム◎
『十津川警部 仙石線殺人事件』西村京太郎
新刊『十津川警部 仙石線殺人事件』はタイトルの通り、仙台と石巻を結ぶ仙石線が登場。昨年の弊社刊行『十津川警部 仙山線〈秘境駅〉の少女』に続いて同じ宮城県が舞台となりました。こちらは仙台と山形を結ぶ路線です。深山が表紙の仙山線に対して、仙石線は海の青が印象的。作中にも登場する松島海岸の風景を取り入れた表紙となりました。
本作は東日本大震災から5年後の話です。津波によって行方不明となっていた豪華客船「グズマンⅡ世号」が金華山沖で発見されるのですが、客室から出てきたのは白骨化した遺体と2億円相当のプラチナ。物語の糸口となるこのプラチナを運ぶために使われたのが仙石線なのです。西村先生がなぜ震災から5年後の仙石線をテーマに選んだのか、推理小説研究家の山前譲さんにいただいた解説にその答えを見出すことができます。すなわち「(仙石線が)全線復旧したのは二〇一五年五月。震災から四年余りが過ぎていた。(中略)東北地方をよく舞台にしていた作者が、仙石線の全面復旧に際して送ったエールだったのではないだろうか」。震災の翌年、個人的に仙台、松島を訪れた時のことを思い出し、胸が熱くなりました。全面復旧後の仙石線はまだ体験したことがありません。またじっくりと訪れ、風景と食を堪能したいと思います。
さて、物語に話を戻しましょう。遺体とプラチナのつながりが見えないまま、舞台は東京・青梅へ。5年前から記憶を失ったまま入院している元モデルの女性が何者かに命を狙われます。十津川警部らがこの事件を捜査していくうちに、宮城の事件につながっていくのですが……さらに思わぬ方向に物語は進みます。続きはぜひ本作でお楽しみください!
西村先生が他界されて早くも1年以上が過ぎました。生前の精力的なご活動によって誕生した640超の作品は永遠です。その作品がある限り、ミステリへの旅は続くのです。
──『十津川警部 仙石線殺人事件』担当者より
『十津川警部 仙石線殺人事件』
西村京太郎