# BOOK LOVER*第17回* 宮田愛萌

# BOOK LOVER*第17回* 宮田愛萌

 古典が好きだ。

 これは私のアイデンティティのひとつでもあると思っている。だが、自分がいつから好きなのか、なぜ好きなのかについてはひどくあいまいだ。

 中学一年生の時のはじめての古典のテストは満点で、嬉しかったのだけれど、同じくらい、こんなもんかな、と思ったことも覚えている。進級して古典文法を習ったあとのテストは暗記が嫌いなせいでひどい点数であったけれど、古典を苦手だと思った記憶がない。なんならずっと得意だと思っていた。苦手な自覚のある英語よりも低い点数をとっておいて、得意科目を名乗るなんて厚かましいな、と今の私なら思う。

 この間、新しく部屋の本棚に日本の古典コーナーを作りながら、そんなことを考えていたら、ふと思い出した。講談社青い鳥文庫の『源氏物語 あさきゆめみし』。私の一番古い古典の記憶はこれだった。まだ小学生だった私がどうしても読みたくて、親に置く場所がない、と渋られながらも買ってもらった全五巻。

 見事に私は若紫に夢中になり、そのまま『枕草子』や『伊勢物語』を読むようになっていった。私はなんとなく中古の文学作品の読み方を理解していったのだと思う。おかげで、どんなに文法や単語がわからなくても雰囲気で文章を味わって楽しむことができ、得意科目は現代文と古典だと豪語できるようになった。

 あの出会いがなければ、私は古典を勉強しようなどとは思わなかっただろうし、『万葉集』に魅了されなかっただろう。大学でも別のことを勉強していたかもしれない。

『源氏物語 あさきゆめみし』は、私にとって運命の一作であった。

 


源氏物語 あさきゆめみし(1)

源氏物語 あさきゆめみし』
大和和紀
原作・絵
時海結以 文(講談社 青い鳥文庫)
大和和紀の華麗なる源氏物語絵巻『あさきゆめみし』を小中学生向けレーベルでノベライズ。『源氏物語』入門としても最適な全5巻。

宮田愛萌(みやた・まなも)
1998年生まれ。2017年、けやき坂46の二期生としてデビュー。日向坂46のメンバーとして精力的に活動を続ける。2023年1月に活動終了。

きらきらし

『きらきらし』
宮田愛萌 著(新潮社)

23年1月に日向坂46を卒業した宮田愛萌が、高校時代にその面白さに目覚め、大学時代には奥深さを学んだ『万葉集』。日本最古の歌集から選んだ5首をモチーフに紡いだ連作短編集。

〈「STORY BOX」2023年5月号掲載〉

週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド vol.93 ときわ書房志津ステーションビル店 日野剛広さん
◎編集者コラム◎ 『十津川警部 仙石線殺人事件』西村京太郎