◎編集者コラム◎ 『緑の花と赤い芝生』伊藤朱里
◎編集者コラム◎
『緑の花と赤い芝生』伊藤朱里
4月から、子供が保育園に通うようになりました。
たくさんの先生、お母さんやお父さんたち……、久しぶりに押し寄せる大量の出会いを通して感じていたのは、「子供の親である」ということ以外に共通項がない人との、「出会いのランダムさ」です。いろいろなタイプ、いろいろなご家庭、いろいろな考え方。子育てについてもあらゆる点で人の数だけ答えがあり、人の価値観はこんなにも多様なのかと感じています。
さて、本書で描かれているのは、「27歳」というだけが共通項の、2人の女性です。
キャリアや家庭への考え方も、性格も見た目も、真逆とも言えるほどに異なるタイプの同性のふたりが、親族になるという荒々しいやり方で(でもこれってあるある)、ひとつ屋根の下で暮らさなければならなくなります。
存在を無視して、気にしないで生きていければいいけれど、そういうわけにもいかないのが親族の厄介なところ。
それどころか、同じ年齢で同性の相手の存在が、必要以上に気になってしまって、気がつけば相手のことをずっと考えている……。
「似たタイプ」「気が合う」「同じ趣味」といった人同士でない関係が、前向きに進展することってあるのだろうか。この作品では、そんな疑問の答えを垣間見ることができます。
2人はどのように関係を進めていくのでしょうか。恐ろしいような、憧れるような、羨ましいような、一言では言い表せないたくさんの感覚が去来すること間違いなしです。
装丁はアルビレオの草苅睦子さん、装画は杉山真依子さんが担当してくださいました。
そして解説は寺地はるなさん! 素晴らしい解説をしてくださっていますので、そちらもぜひチェックしてください。
自分だけかもしれないと思っていたモヤモヤした感情が丁寧に言葉にされていく。伊藤朱里作品を読む快感、この作品でもふんだんに味わうことができます! ぜひ手に取り、噛み締めるように読んでいただきたいです。
──『緑の花と赤い芝生』担当者より
『緑の花と赤い芝生』
伊藤朱里