ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第145回

「ハクマン」第145回
15年漫画家をやっているが、
忘年会や新年会といった会合に
1回も出たことがない。

しかし、このような会合には誘われるうちが華である。他でこのような会合に出席する機会は帝国ホテルでバイトしない限りはもうないだろう。漫画の仕事があり、招待があるうちに1回は行っておかないと後悔するような気がする。

そういえば某 S(hit)学館も忘年会をやるはずだし、Sの集まりは豪華という噂も聞いている。

もう誘われていない、という可能性もあるが一応メール履歴を探してみたところ、一応招待されていたのだが、恒例の年末謝恩会は「8月」に変更になり、もう終了していることが判明した。

「果たしてアイツは来るのか…!」の煽りで次号に続き、来なかった上に日時を3か月以上見誤っていたというクソ展開だが、読者が怒るのはT橋先生やU沢先生が来なかった場合であり「背景にモブが1人来てない」という理由で怒るやつはいないだろう。

そもそも、何故このような会合に頑なに出席しないかというと、まず「遠い」という如何ともしがたい理由がある。私でなくても忘年会や新年会のために飛行機で馳せ参じるというパリピはなかなかいないだろう。

また、漫画家というのは社会保険各種と同時に曜日の概念を失っているため、会もド平日に開催することが多く、会社員兼漫画家だった時は余計参加できなかった。

ならば無職になった今、家の隣で開催してれば行くのか、というとそれでも行かない気がする。

出版社が開催する漫画家の集い、と聞けば面白そうな気がするが「行けば面白いことがあるかも」と思って出席したものが面白かったためしがない。

だが、これは会が悪いのではなく、こちらの姿勢の問題である。

 
カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。

◎編集者コラム◎ 『恋する検事はわきまえない』直島翔
深沢 仁『ふたりの窓の外』◆熱血新刊インタビュー◆