ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第26回
軽々しく聞かれる「来年の抱負」にも
文句を言わせてほしい。
もちろん、年内の仕事が終わったからと言って油断はならない、特に武器は捨ててはいけない。
「お疲れ様です。次の締切は1月6日です」というセリフがほぼ確実に出てくるので、すぐさま手持ちの武器を好きなところに投げつけよう。
心臓は逆にお勧めできない。
目とか、意外なところで足などがお勧めだ、アキレス腱を狙おう。
このような「連休中仕事をすることが前提の納期」というのは、どこの業界でもある。
金曜日の夕方に「月曜朝イチでいいですよ」という奴だ。
これを言われると、作家は原稿よりも編集の死体を月曜朝イチ豊洲に上げることを考え始めるので、言うなら水曜あたりにしてほしい。
確かに、家庭持ちでない漫画家、もしくは持っているけど己を筆頭に全員無職という家庭なら曜日はあまり関係ないので、そう言われても会社員ほどダメージはない。
しかし、年末年始というのは無職でもさすがにやることがあったりするのだ。
私でさえ、双方の実家に行くなどやることがあるのだから、全人類あるに決まっている。
よって、年末進行の予定を知らせる時は、年始の締め切りも同時に言った方が良い。崖を越えたあとに次の崖に出てこられると、八甲田山の北大路欣也状態になってしまう。
それだったら最初から「この崖を越えたら次の崖が出てくる」とコブラのように言ってもらったほうが良い。
だが、文句はあるが、連休進行に関しては、そういう仕事なのだからしょうがないとは思っている。
しかし、この季節もう一つ文句がある。
私が、転売ヤーと何とかプラスの手数料、そして「○○さんの年齢は? 出身地は? よくわかりませんでした!」というクソキュレ―ションサイトと同等に憎んでいる、目次などにある「作者コメント」の件だ。
この季節、作者コメントに、高確率で「来年の抱負は」という質問が出てくるのである。
答えは「聞くことがないなら、聞くことをやめろ」だ。
まず「年が変わるからには新しい目標があるに違いない」という発想が間違っている。
むしろ、作者コメントで「来年の抱負は?」と聞かれたせいで、こちらは来年の抱負を作らなければいけなくなってしまうのだ。
抱負を作ったからには、達成しなきゃいけない気がしてくるし、達成できなかったら「俺は自分で立てた目標を達成できたことがない。俺はいつもこうだ。誰も俺を愛さない」と落ち込まなければいけなくなる。
己が軽々しく発した「来年の抱負は」という、去年と全く同じ思考停止質問で他人を挫折に追い込んでいるという事実を肝に小学校の時買わされる彫刻刀セットで刻んでほしい。