ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第27回
できれば何も聞かれたくない。
それが漫画家の本心だ。
よって実家でも義実家でも、私の仕事に関してはほぼ何も聞かれなくなったのだが、今年は、御年90歳の祖母に「今何をしているのか?」と聞かれたので、心配させないように「家にいる」と堂々と答えた。
デビューして10年も経つと、周囲の関心も薄れ、親戚の子どもたちからも全く興味を示されないのだが、今日びの子どもたちが、漫画やアニメやゲームなどに無関心かというとそんなことはない。
甥っ子はニンテンドースイッチを片時と手放さず、姪っ子はスマホを凝視して「左馬刻様…」とつぶやいていた。
今の子どもにも、二次元コンテンツは人気であり、ただ自分がそこから5億光年ほど離れた位置にいるから子どもに関心を持たれないだけだ。
皆さますでに私の立ち位置より「左馬刻様」という語呂良すぎな名前の方が気になっていると思うし、私もその話がしたい。
もはや説明もいらないような気もするが、声優×ラップで今大ブレイク中の「ヒプノシスマイク」の話である。
私と同年代ではまっている者も多いが、やはりティーンの間でも大人気のようだ。
ヒプノシスマイクだけではなく、声優が歌うというのはもはや普通のことであり、それが下手なアイドル以上に人気、というのも珍しいことではない。
よって「声優」を目指す人は昔より格段に増えてきており、専門学校なども乱立しているようだ。
しかし、先日大御所声優が「声優マジでお勧めできない」と言っている記事を読んだ。
声優のみならず、漫画家だって何だって、成功できるのは一握りという単純な話かと思いきや、そうではなかった。
漫画家なら、ストーリーから作画まで全て1人で制作し、投稿するなり販売するなりできるため、仕事がなくても「出来ることが何もない」ということはないのだ。
対して声優はまず作品と役あってのものなので本当に「待つ以外何もできない」ということがあるのだそうだ。
スキルを磨いたりすることは出来るが、それを披露する場すらなかったりするらしい。
また声優人気により、明らかに作品数より声優と声優志望者の数が多くなっているため、大半が仕事にあぶれることになってしまうのだそうだ。