ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第26回
軽々しく聞かれる「来年の抱負」にも
文句を言わせてほしい。
現在、世の作家たちは年末進行に追われていることだろう。
年末進行、お盆進行に関しては前にも話したとは思う。
しかし、大事なことなので、ではなく、書くことがないのでもう一度書く。
簡単に言えば、連休を前に締切りが大幅に早まる現象である。
しかし作家というのは、曜日はもちろん世間の連休も季節も大して関係ない職業だ。
5月頃に「この気候は……10月!」という見事なプロファイリングを見せる奴ばかりなのである。
よって、連休のための締切り前倒しというのは作家ではなく完全に「先方の都合」である。
ちなみに「休載」も作者都合の場合もあるが「お前の席ねえから」という「載せるページがない」という雑誌都合で休ませられることもあるので、一概に作者がさぼっているとは思わないでほしい。
しかし年末進行で言う「先方の都合」の「先方」は決して出版社や編集ではない。
これが編集相手だったら「原稿料などいらぬ」「年など越せなくていい」「パスタに塩、それが俺の年越しそばであり雑煮!」という不退転の決意さえあれば、年末進行など無視して良い。
しかし、年末進行の「先方」というのは主に「印刷所」のことである。
印刷所が「お前らが何と言おうと盆正月は休む」とおっしゃられているので、我々はそれに合わせるのだ。
平素一番迷惑をかけている所なので、そう言われたら従う他ない。
つまり、年末進行で地獄を見ているのは主に雑誌連載の作家である。
WEB連載のいう「年末進行」は出版社や編集都合なので、無視して良い。
編集どもが年末年始に余裕を持つために「年末進行」という強い言葉を使っているだけなので、数日遅れても何とでもなるのだ。
特に厳しいのは週刊誌の連載だ。年内の原稿はもちろん、年始分の原稿まで前倒しでやらなければいけない。
漫画家という「将来を見据えられないからこうなった」という人種に対し「来年のことをやれ」という時点で酷な話だ。
精神的苦痛を受けたとして訴えられてもおかしくない。