井上真偽 ◈ 作家のおすすめどんでん返し 02

1話4ページ、2000字で世界が反転するショートストーリーのアンソロジー『超短編! 大どんでん返し』が売れています。執筆陣が、大ヒットを記念して、どんでん返しを楽しめる映画やアニメ、テレビドラマ、実話怪談など、さまざまな作品を紹介してくださいました! ぜひチェックしてみてください。


作家のおすすめどんでん返し 02
予想を外される愉しさ

井上真偽 

どんでん返しのオススメ……というとそれ自体ややネタバレになってしまうのが心苦しいところですが、自分の中では(いわゆるミステリでいう「叙述トリック」的なひっくり返しだけではなく)、単純に「ストーリーが意外な方向に進む」というのも広義のどんでん返しだと思っていますので、今回はそのタイプを中心に紹介していきたいと思います。

まず、映画の『ミスト』。謎の霧に覆われた町で謎の怪物が襲ってくる、というB級パニックホラーですが、途中経過はともかくラストの「え、そのオチに持っていくの?」という後味の悪さは他に類を見ません。ハッピーエンド好きな自分は絶対書きたくないタイプの話です。

展開が読めなくて面白いといえば、『ゲーム・オブ・スローンズ』。中世的で重厚なファンタジー世界を舞台に、世界を統べる「鉄の玉座【スローン】」を巡って王位継承者たちが争う話ですが、とにかく次に誰が死ぬかがわからない。特に「この状況から劣勢をひっくり返すのか!」というサーセイ王妃の不死鳥ぶりは必見です(個人的な推しはデナーリス王女ですが)。

同じく、次に誰が(どう)死ぬかわからないという意味でオススメは、『ファイルナル・デスティネーション』シリーズ。これもホラーで、「飛行機事故死を幸運にも免れた乗客たちが、やはり死の運命から逃れられず、謎の偶然力で次々死んでいく(一作目)」といった感じの都市伝説的な話です。ようは主要人物全員死ぬよ、という話なのですが、それがわかっていても先が読めない。「あ、これが原因で死ぬな、コイツ」というこちらの予想はたいてい外されます。

最後にSF小説で、『エンダーのゲーム』。これは展開というより、終盤で明らかになる事実が重い。この作品の主人公・エンダーは、エンタメでは珍しく「賢いのに嫌味でない少年」なのですが、「そんないい子にそんな重いもの背負わせるな!」と思わず叫びたくなります

以上四作、駆け足ですが、オススメです!


井上真偽(いのうえ・まぎ)
神奈川県出身。東京大学卒業。2014年『恋と禁忌の述語論理』で第51回メフィスト賞を受賞しデビュー。『聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた』で「2017本格ミステリ・ベスト10」国内編1位を獲得。18年『探偵が早すぎる』がテレビドラマ化される。著書に『ベーシックインカム』『ムシカ 鎮虫譜』などがある。

超短編!大どんでん返し

『超短編! 大どんでん返し』
編/小学館文庫編集部

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