辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第34回「なぜ学校に行くのか」

辻堂ホームズ子育て事件簿
幼稚園が大好きすぎる娘。
いつか「行きたくない」と言い始めたら
なにをどう伝えればいいだろう。

 2023年12月×日

 冬。寒くて嫌な季節だ。個人的には好きではない。小学生の頃などは、冬が嫌いだと発言すると「えー、12月生まれなのにー?」などと周りに驚かれたものだけれど、冬生まれだから冬が好きになるはずだという論調は何事か。振り返ってみれば、わけが分からない。

 冬は、感染症が流行る季節でもある。近くの小学校や幼稚園等では、このごろインフルエンザが大流行。我が家もご多分に漏れず、先月、4人中3人が感染した。唯一無事だったのは誰かというと、私である。インフルエンザにかかった幼児2人のお世話をしながら自分だけ隔離するなんて無理だ、と最初から開き直り、家の中ではマスクもせずに夫や子どもたちと接していたのに、待てど暮らせど熱が出ない。結局、家族の出席停止期間が明けるとともに、私も首を傾げながら日常生活に復帰した。絶対かかると思ったのにな……? 不思議なこともあるものだ。

 家族が全員インフルエンザにかかったと人に言うと、「看病、大変だったでしょう」と同情される。それはまあそうなのだけれど、熱を出した子どもたちはいつもより大人しいので、テレビでもつけておいてあげれば平和に一日が過ぎていく。こういうとき、一番苦労するのは仕事の調整だ。今回は子どもたちが時間差でインフルエンザにかかったため、「10日近くも仕事ができないなんてどうやって挽回すれば……!」と当初は絶望しかけたものの、たまたま原稿の掲載媒体側の都合で〆切が1か月延び、九死に一生を得た。いやぁ、ついている。

 そんなわけで、インフルエンザ感染期間中に一番大変だったのは何かというと……熱が出ていても幼稚園に行きたがる娘を説得することだった。

 娘は幼稚園が大好きだ。4月に入園して以来、体調不良で欠席するのは今回が初めてだった。しかもインフルエンザ、熱が下がったからといってすぐに登園できるわけでもない。休んでいる間、我が家では毎晩のように、似たような会話が繰り返された。

「まま、あしたは?」「お熱があるから、幼稚園はお休みかなー」「うぇぇぇぇぇぇぇん」

「まま、あしたは?」「うーん、まだお熱が下がってないから、おうちにいようね」「うぇぇぇぇぇぇん」

「まま、あしたは?」「お熱は下がったけど……まだ幼稚園には行けないんだ、ごめんね」「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇんんん」

 どうしてこんなに幼稚園が好きなのか。

 よく分からない。歌やダンスが好きだからかもしれないし、園庭の遊具が充実しているからかもしれない。いずれにせよ、まったく渋らずに、むしろいそいそと登園してくれるのは、親としてはありがたい限りだ。インフルエンザにかかったときだけは大変だったけれど、普段楽しているのだから、このくらいの苦労は何でもない。

 いつまで幼稚園や学校を好きでいてくれるのだろう、と時たま考える。

 ずっと、というわけにはいかないはずだ。「行きたくない」「休みたい」と言われる日もいつか来るだろう。そういうときに、親としてどのように対処したらいいのか。どんな言葉をかけるべきか。今のうちから、心の準備くらいはしておこうと思っている。


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辻堂ゆめ(つじどう・ゆめ)

1992年神奈川県生まれ。東京大学卒。第13回「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞を受賞し『いなくなった私へ』でデビュー。2021年『十の輪をくぐる』で第42回吉川英治文学新人賞候補、2022年『トリカゴ』で第24回大藪春彦賞を受賞した。他の著作に『コーイチは、高く飛んだ』『悪女の品格』『僕と彼女の左手』『卒業タイムリミット』『あの日の交換日記』『二重らせんのスイッチ』など多数。最新刊は『山ぎは少し明かりて』。

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