◎編集者コラム◎ 『風はずっと吹いている』長崎尚志

 ◎編集者コラム◎

『風はずっと吹いている』長崎尚志


風はずっと吹いている

 2年前の夏、女優の渡辺美佐子さんらが戦争を二度と起こさないためにもと、毎年自費で原爆の朗読劇(30年続いてましたが、今年で終わりだそうです)を全国を回ってやってらっしゃるのを聞きにいったとき、原爆の犠牲者の髑髏をアメリカ人が土産にしているという話がありました。

 そのときに、ふと思ったんです。

 長崎さんが社会的なテーマをまじめにそれを語らずに、でもその問題が底辺に流れているようなエンタメミステリを書いたら面白いんじゃないかと。
 長崎さんは広島にお部屋を借りてらっしゃるくらい広島への思いが深いから、ならばこの原爆と髑髏で、エンタメミステリは作れないかとお話しさせてもらったのです。

 そしたら、僕もいつかは原爆というものに向き合ってみる日がくる、僕にとって避けられないような気がしている、でもエンタメにするのは不謹慎というか……みたいなことをおっしゃってました。偶然とはいえ、テーマは一致したのです。

 ただ原爆をエンタメにしていいのかと、しばらくは悩まれてはいました。
 しかし核問題は今だからこそ書きたいし、それを正面から真面目に書いても読者は読んでくれないだろう、やはりエンタメミステリでやってみようとこの本が決まりました。

 そこからは、さすがの長崎さんです。
 ものすごい数の資料や映像にあたり、取材されました。どっからそんな情報を探してくるのかしら、と思うようなものまで見つけて読み込んでらしたと思います。

 現代の事件と原爆の日に起きた事件とで、 ミステリにするというプロットを聞いた時は、なんて面白そうなんだろうと思いました。

──『風はずっと吹いている』担当者より

 

翻訳者は語る 芹澤 恵さん
辛酸なめ子「電車のおじさん」第6回