◎編集者コラム◎ 『遊戯神通 伊藤若冲』河治和香

◎編集者コラム◎

『遊戯神通 伊藤若冲』河治和香


遊戯神通

 本書を執筆する際に著者の河治和香さんが取った手法は、若冲の生きた江戸時代と明治時代の、二つの時代の京都から描くということでした。

 明治時代の語り手は、図案家の神坂雪佳。冒頭は、若冲が亡くなって100年以上経った明治36年。アメリカのセントルイス万博の日本会場に〈若冲の間〉が出現し、世界に〈Jakuchu〉の名が知られるようになります。果たして、このブームの仕掛け人は誰なのか。

 そして江戸時代では、美以という女性が登場します。美以は、若冲が主人をしていた京都・錦市場の大店〈枡源〉に、鳥の世話をするために奉公することになりました。若冲が飼っているのは、〈砂糖鳥〉や孔雀といった当時では珍しい鳥ばかり。屋敷のこの一角で、若冲はひたすら絵を描いているのでした。店は、白歳という弟夫婦と年若い弟の宗右衛門が取り仕切っていました。その後、奉行所から錦市場の差し止めを命じられたり、京都が大火事になって店が焼けてしまったりとさまざまな出来事が起こります。美以は次第に若冲への思いを深めていくのでしたが……。

 物語とともに作品の数々が紹介され、その技法も探っていきます。ヨーロッパで作られた最新の〈べれんす〉という最新の絵具が使われていたこと。なぜ若冲の版画作品は黒が濃いのか。〈枡目描き〉の手法はどこから来たのか。

 さらに、金刀比羅宮に描いた襖の絵が傷んだために処分されたにもかかわらず、一部が残され伝わっていたことや、晩年に制作した石峰寺の石仏は、その一部が目白の椿山荘にもあることなど、厄難に遭いながらも受け継がれていく若冲の作品の強さを伝えています。

 また、木村蒹葭堂や平賀源内、明治編ではフランク・ロイド・ライトや橋口五葉といった名前も登場。若冲の多彩で奥深い世界を感じることができます。

 2018年に刊行した『がいなもん 松浦武四郎一代』で、河治さんは第25回中山義秀文学賞と第13回舟橋聖一文学賞を受賞されました。今、注目の時代小説作家による長編小説です。

 最後に、お知らせです。画像は、河治さんが手書きで作った本書の特別付録です。A3サイズを手折りでA6サイズにしました。関連した画像や情報が掲載されています。書店の皆様に、販促グッズとしてご提供いたします。ご希望の方は、小説丸(小説丸Twitter @shosetsumaru にてDM受付中)までご一報下さいませ!

──『遊戯神通 伊藤若冲』担当者より

遊戯神通 伊藤若冲

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