爽やかだけが青春じゃない!

『死にがいを求めて生きているの』(朝井リョウ著)は、読めば読むほど不気味さが増し一気読み必至です。
書店員名前
旭屋書店新越谷店(埼玉) 猪股宏美さん

 青春。アオハル。

 私個人の実体験はまぁ置いておくとして、青春と聞くと何となく爽やかな友情だったり恋愛だったりのイメージがあるのですが、皆さんはどうですか? 爽やかなキラキラした青春モノももちろん好きですが、今回は「爽やかだけが青春じゃない!」三冊をご紹介します。

『友情だねって感動してよ』小嶋陽太郎

『友情だねって感動してよ』小嶋陽太郎
新潮社

 まずタイトルにグッときました。

「友情に恋愛が絡むとなぜこんなにもこんがらがるのか。あぁ、それが青春か!」といった、青春の爽やかさと黒さが同居した全六篇の短篇集です。

 神楽坂の神社と公園で起こる不思議な現象が鍵となって物語が進んでいくのですが、そこがまたクセになる面白さで、読後にモデルとなった神社と公園を訪れてしまいました。

『県民には買うものがある』笹井都和古

『県民には買うものがある』笹井都和古
新潮社

 女による女のためのR─18文学賞友近賞受賞の表題作を含めた全五篇の短篇集。

 青春時代特有の満たされない思いを抱えた主人公たちの性欲と承認欲求と歪な思いが、これでもか! と突き刺さります。読んでいて居たたまれなくなるも、ドロリとした中から時折垣間見える彼女たちの純粋さに目が離せなくなりました。

『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ

『死にがいを求めて生きているの』朝井リョウ
中央公論新社

 二人の青年を軸に展開される青春小説であり、ミステリーであり、平成の闇を描いた物語。

 八組九名の作家による「螺旋プロジェクト」の第一弾(もちろんプロジェクトを知らなくても楽しめます)。

 一章で受けた印象のまま二章を読み進めていくと感じる違和感にゾワゾワしました。それが一体何なのか知りたいのに進めば進むほど不気味さが増すという一気読み必至の作品です。

 二人に一体何が起こったのか。この友情の根底にあるものは何なのか。ぜひ読んで確かめてみて下さい。

 三作を通して思ったのは「青春って痛いなぁ」ということ。自意識過剰で傷つきやすく、他人の目を気にして自分を装って、欲求と焦りだらけ。だけど、もがいた分だけ濃密で、青春って尊い! これからもそんな青春小説を読みたいです。

〈「きらら」2019年6月号掲載〉
 
第20回小学館文庫小説賞贈呈式が行われました。受賞作は、黒田麻優子さん『春がまた来る』。
HKT48田島芽瑠の「読メル幸せ」第14回