HKT48田島芽瑠の「読メル幸せ」第29回

HKT48の田島芽瑠の読メル幸せ

第29回


9月になりました?
早いものでもう9月? 驚きを隠せません。
どんな世界でも時間は同じように動いてて、どこか置いてきぼりになってる気がしてしまう。そんな年もあって良いのかなと思う反面、貴重な20歳という年を無駄にしているんじゃないかと思って焦る自分もいます。でもきっと、この感情も世界共通なのかな? と思うとみんなが同じ感情を持つ事ってなかなかない経験だなと思います。

この間、久しぶりに飛行機に乗ったんです。私達HKT48は福岡を拠点に活動していますが、東京での仕事も有り難い事に多く、いつもなら月の半分は東京だったり、多いときは1か月以上東京だったりする時もありました。でもこの様なご時世になり、パタリと遠征がなくなって、ライブやコンサートがない夏ってこんなに暇なんだと、今まで当たり前の様にあったステージの有り難みを改めて痛感しました。

私が本を読むのに好きなのが移動時間なんです。
飛行機の中で、新幹線で、小さい自分の陣地で1人になれる感覚がとてつもなく心地よい。だから、久しぶりに飛行機に乗るって知って、旅のお供は何の本にしようかとワクワクしながら本屋さんに向かいました。
入った途端、表紙に目を奪われ、吸い込まれる様にその本を手に取りました。これが運命というやつです。

そんな私が一目惚れした作品を今回は紹介します?
凪良ゆうさんの『わたしの美しい庭』です。

メルちゃん

2020年の本屋大賞を受賞された作家さんで、『わたしの美しい庭』は本屋大賞の作品ではないのですが、あまりの表紙の美しさに手に取らずにはいられませんでした。

何だこの透明感。澄んでて濁りがなくて美しい。とても空気が綺麗で呼吸がしやすい。あぁ、心が穏やかになる。ホッとする。これまで出合ってきた本とは何かが違う安堵感がありました。

普通って何だろう? 普通じゃないってどういう事?
人と違う事をすれば、「それは間違ってる」「それはおかしい」「変わってる人だね」と勝手に価値観を押しつけられる世の中。息苦しさ、生きにくさ。常に自分の意見より周りがどう思うかを考えなきゃいけないなんて本当、最高につまらない。
お互いを尊重し合って、お互いの良さを認め合って、そうやってみんなで手を取り合って生きていければいいのに。どうして正しいか間違っているか決められてしまうんだろう。そんな事を考えた事はありませんか?

メルちゃん

『わたしの美しい庭』はそんな現代における、なんか嫌な灰色のモヤモヤっとしたものをスパッと切ってくれる作品です。

小学生の百音ちゃんは血の繋がらない統理と2人暮らしをしている。2人が住んでいるマンションの屋上には悪いご縁を断ち切ってくれる「縁切り神社」があり、そこを訪れる〈生きづらさ〉を抱えた人々との物語。
この作品は連作短編集です。
両親を事故で亡くし、お母さんの元旦那さんに引き取られた10歳の少女。結婚という圧に悩む女性。LGBTと向き合う男性。うつ病と闘う男性。それぞれが抱えている事と向き合い、闘い、「これでいいんだ」「私達の生き様はこれだ」って見せてくれる。
登場人物達が、みんな自由で可笑しくて輝いてて羨ましくて泣きそうになった。
「あなたも大丈夫。そんなに考え込まないで、楽しく生きようよ。私達だって強いわけじゃない。それはみんな一緒なんだから、ほら美味しいものでも食べましょう」ってみんなで笑いながら手を差し伸べてくれてる気がして、あぁ良いなこの世界って、心が楽になりました。

幸せの形は決まってない。人にはそれぞれの「かいしゃく」があって、そういう誰かの「かいしゃく」に囚われず私は私の「たのしい」を大事にして良いんだ。
多数派の意見が正しいと決めつけられてる世の中に慣れすぎて、見失っていた大事な事を思い出させてくれた。

何が何だか分からなくなった時、理由はないけど苦しくなった時、「よくわからない灰色のモヤモヤしたもの」を感じた時。
そんな時が来たら、是非この本を読んでほしい。
著者が、登場人物達が優しく寄り添ってくれてるようでとても温かい気持ちになれる。出合えて良かったと心から思える作品です。

是非みなさんも深呼吸しに行ってみてください。素敵な時間になると思います。
良い本の旅を、田島芽瑠でした。

メルちゃん

(次回は10月中旬に更新予定です)

 
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