『レーエンデ国物語』多崎 礼/著▷「2024年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR

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昔のあなたに贈る一冊


 子どもの頃。毛布にくるまって本を読みふけっていたあなたに、もし今のあなたが本を差し出せるなら……なにを渡しますか?
 ミステリーでしょうか、歴史小説でしょうか。はたまたSFか恋愛小説か。
 私は『レーエンデ国物語』というファンタジーを渡すと思います。

『レーエンデ国物語』は、異なる世界のレーエンデという地を巡る革命と冒険の物語です。いわゆるハイファンタジーであると同時に、全5部で構成される400年にわたる長大な歴史シリーズの第1巻でもあります。
 家に縛られてきた貴族の娘・ユリアが逃げ出すように旅に出た先は、不思議の国と呼ばれるレーエンデの地でした。そこで、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタンと出会います。2人は互いに好意を育みながら一冬を過ごすのですが、大国の思惑が2人の運命を大きく揺り動かすことになります。

 著者の多崎礼さんは、一言でいうと天才です。
 ですが、言葉を選ばずにいうと、遅咲きの天才かもしれません。2006年に『煌夜祭』という作品でデビューするまでに、投稿生活は17年間にものぼったそうです。
 ですが、その分なのでしょうか。作家として綺羅星のように光り輝く美点を備えています。
 ただただ、小説を書き続けるのです。

 今日も書いて、明日も書いて、仕事に詰まったら息抜きに小説を書きます。打ち合わせのあと小説を書き、校正ゲラを確認したあとにショートストーリーを書き、夢のなかでも小説を書きます。「『レーエンデ国物語』が完結したら一番やりたいことは?」と聞くと、「次のシリーズを書きたい」との答えでした。

『レーエンデ国物語』をはじめるとき、多崎礼さんと合言葉にしていたのは「完結まで出し切れるように売りましょう」でした。そして、ときどき「一生小説だけ書き続けて、死ねるようにしましょう」と笑いあいました。
 それだけに、今多くの方々に読んでいただけることが嬉しくてたまりません。そして、もっと読んでくれ!!! と心の底から思います。

『指輪物語』『ナルニア国物語』『十二国記』『ハリー・ポッター』『ダレン・シャン』そういった物語に魅了されたあの頃の自分に届けたい一冊です。
 同じ気持ちの方々に、そしてこれから成長する多くの読者の卵に、届くことを願っています。

──講談社 講談社文庫出版部 泉友之


2024年本屋大賞ノミネート

レーエンデ国物語

『レーエンデ国物語』
著/多崎 礼
講談社
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