天津佳之

採れたて本!【歴史・時代小説】
 菅原道真は、今も〝学問の神〟として信仰されているだけに、漢詩文集『菅家文草』の編纂や、多くの後進を育てた私塾・菅家廊下などが注目されがちだ。これに対し『あるじなしとて』は、政治家としての道真に着目した異色作である。八八六年。文人官吏として順調に出世していた道真は、突然、讃岐の国司に任じられる。地方の国司を数年ほど務め『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村翔吾の受賞後第一作は、池波正太郎、司馬遼太郎、火坂雅志らが取り上げた人気の戦国武将・真田幸村を描いている。関ヶ原の戦いに勝利し豊臣家を滅ぼす機会を狙う徳川家康のもとに、二度も煮え湯を飲まされた真田昌幸の息子・幸村が大坂城に入ったとの報告が届く。長男の信之は家康に仕え、第二次上田合戦で徳