紺野天龍

大どんでん返し第28回
第28話 紺野天龍「筋肉は裏切らない」  男、御堂筋肉太郎、四十二歳──我が世の春が来た。「ナイスバルク! ビッグブラザー!」「キレてるよ! 親の大胸筋が見てみたい!」「そこまで仕上げるために眠れない夜もあっただろう!」一身に降り注ぐ大声援。俺は次々にポージングを決めてそれらに応えていく。さらに沸き上がる乗客たち。もは
「推してけ! 推してけ!」第10回 ◆『シンデレラ城の殺人』(紺野天龍・著)
評者・千街晶之(ミステリ評論家) ああ言えばこう言うシンデレラの法廷推理戦術 近年、パラレルワールドを舞台にしたり、幽霊やゾンビなどの実在を謎解きの前提にしたり……といったタイプのミステリが「特殊設定ミステリ」と呼ばれている。二○一八年に『ゼロの戦術師』でデビューし、科学の代わりに錬金術が文明を形成している架空世界を舞
「推してけ! 推してけ!」第9回 ◆『シンデレラ城の殺人』(紺野天龍・著)
評者・杉江松恋(書評家) もしかすると世界で一番好きなシンデレラ あ、このシンデレラいいじゃない。素敵。主人公の魅力でまず、ばっちり心を掴まれたのだ。紺野天龍『シンデレラ城の殺人』は、有名すぎるほどに有名なあの童話を下敷きにした、読みどころ満載のミステリーである。物語の舞台となるのは、架空の王国イルシオンだ。現国王の跡
はじまりの物語 子どもの頃、寝るまえに母から絵本を読んでもらうのが習慣だった。カラフルなイラストで彩られた数多の物語はいつだって魅力的で、僕はその時間が大好きだった。