「妄想ふりかけお話ごはん」平井まさあき(男性ブランコ)第15回
15.「レコペン」
先日、Eテレの『ザ・バックヤード〜知の迷宮の裏側探訪』という番組で長崎へ行ってまいりました。水族館、動物園、博物館などなど知的好奇心刺激施設の裏側を探検する大好きな番組です。
今回、平井探検隊獅子組が潜入したのは長崎ペンギン水族館です。ちなみに平井探検隊は獅子組しかありません。ちなみにちなんで、隊員は平井一人です。ですから正確には平井探検人です。そうではありますが、一人ではやはり寂しさがほとばしりますので平井探検隊獅子組と呼称させていただきます。僕が獅子座だからです。
この長崎ペンギン水族館は、その名前が示す通り、ペンギンに特化した水族館です。地球上に生息している18種類のペンギンのうち9種類も飼育しています。こんなにもペンギン専門の水族館は世界でも珍しく、海外からも研究者が訪れるそうです。美しい長崎の海に隣接した立地で、僕が見目麗しいお嬢さんだったら白いワンピースを着て、つばのバカ広い麦わら帽子をかぶって、風を感じつつ、目を細め、異国の地に想いを馳せるところでした。危ない危ない。
海と隣接しているため、その海に大きな囲いを巡らせ、自然の遊び場を作って、ペンギンたちがペコペコ歩いたり、スイスイ泳いだりしていました。
そもそもペンギンは寒い地域に住んでいる印象がありますが、フンボルトペンギン、ケープペンギン、マゼランペンギン等はわりと暖かい地域に暮らしています。だから、日本の暖かい季節でも外で遊べるのですね。
この水族館の詳しいバックヤード事情は是非とも番組をご覧いただきたいので割愛させていただきます。今回の記事ではごくごく個人的なところに言及させていただきます。
僕は生き物好きを自称していますが、ペンギンについてうっすらあ〜としか知りませんでした。それはもう、うっっっっすらあああでした。そんな薄ら野郎だったので初めて出合うペンギンがいました。
その名もヒゲペンギンです。
ヒゲペンギンの名前の由来は、細い顎ヒゲがあるかのように見える模様からです。英名は Chinstrap Penguin です。このチンストラップというのは帽子やヘルメットの顎ヒモを指しています。どちらの名前にもある通り、顎に細い線が入っているのです。僕はこのヒゲペンギンにとても惹かれました。僕は最初、どうしてもこの模様がヒゲやヒモに見えず、ロボットにあるような継ぎ目に見えました。なので、メカ感と言いましょうか、新幹線や、リニアモーターカーの類のような。端的に言ってしまえば、かっこいい造形だと思いました。いや、かっくいい造形なのです。
ヒゲペンギンが海に入ると、モーター音が鳴り響き、ウイーンガシャンと羽がもう2対現れ、ウイーンビビビビと足が引っ込み、代わりにジェット噴射口が出てきます。そしてゴオオというターボエンジンが温まる音が聞こえます。そしてヒゲペンギンは頭の中で「さあ、いこうか」と思うやいなや、バビョーンと水中をコンコルドが如くのスピードで地球の反対まで泳ぎ飛ぶのです。
そんな想像をしてしまうほど目を奪われました。そして僕はヒゲペンギンをレコメンドペンギン、つまり、レコペンにさせていただきました。
ペンギンたちは種類によって、性格が大まかにあるそうです(もちろん1頭ずつにも細かな性格はあります)。種族の傾向というのでしょうか。それでいうとヒゲペンギンは他の種族にちょっかいをかけて楽しむらしいのです。同じ水槽に同居している自分よりも一回りも大きいキングペンギンにそっと後ろから近づいて翼でペチンと叩いて、逃げるみたいな遊びをよくするらしいのです。
何それ、可愛い。してほしい、可愛い。「ちょっと今ペチンしたの誰〜」みたいなことちゃんと言うから、してほしい。やはりどうしようもなくレコペンでした。
この長崎ペンギン水族館の職員さんたちからペンギンたちに対する深い敬意と愛情をたくさん感じました。ペンギンの平均寿命は約20歳と言われていますが、こちらで飼育されているペンギン等は総じて長寿だそうです。キングペンギンのぎん吉は世界最高齢の39歳まで生きました。
ペンギンたちが健康で長生きするために職員さんはたくさん考え、実行しておられました。例えば、前述したように自然のプールで遊んでもらうことで、ストレスをできる限り無くす、そして、ご飯をあげるときには、職員さんは歩きながら、一頭一頭に配るのです。そうするとペンギンたちは職員さんの後ろをペタペタとついてきます。これは適度な運動です。
そして驚くべきはご飯をあげている職員さんは各水槽に30頭以上いるであろうペンギンがそれぞれ今どれぐらい食べたかを把握して、なるべく腹八分目になるようにしているのだそうです。食べすぎないようにするということが重要なのです。他にもきっと僕では気づかないような気配り心配りをされていることでしょう。
この健康法はきっと我々人間にも当てはまるのではないかと思います。ストレスフリー及びストレスへの向き合い方、適度な運動、腹八分目。
僕はわかっているけどなかなかできないこの3項目を頭に置いて、日々を暮らしていきたいと思いました。僕も長い間、レコメンドされるような人間になりたいからです。そう、レコメンドメンズ、レコメンに。
平井まさあき[男性ブランコ]
1987年生まれ。兵庫県豊岡市出身。芸人。吉本興業所属。大阪NSC33期。2011年に浦井のりひろと「男性ブランコ」結成。2013年、第14回新人お笑い尼崎大賞受賞。2021年、キングオブコント準優勝。M-1グランプリ2022ファイナリスト。第8回上方漫才協会大賞特別賞受賞。趣味は水族館巡り、動物園巡り、博物館巡り。