田島芽瑠の「読メル幸せ」第79回

田島芽瑠の読メル幸せ

第79回


11月になりました🍂

あと2ヶ月で今年も終わりますね。この時期になると今年中にやっておきたかったことはまだあるかな? と自分に問いかけます。12月だと何かあった時に遅いし、10月だと、1年が終わる実感がまだなくて想像しにくい。なので11月が今年を振り返りながら残りの日数をどうやって過ごしていくか考えるのにとてもいい月なんです。今年は行きたかった海外旅行にもたくさん行けて、何か習い事したいなと思って英会話に通い出したり、新しいことに挑戦できた年でした! 現在舞台の稽古中なので、健康で本番を迎えることが今年の私のやるべきことかなと思います✨

今回ご紹介するのは、青山美智子さんの『赤と青とエスキース』です。1枚の絵画をめぐる、5つの物語。短編集だと思っていたら1つの愛の物語でもあったなんて・・・。ロマンチックすぎる! 読み終わった後も高揚感が抜けなくて、終盤はポロポロ泣いてしまいました。透き通る綺麗な水の上をポロンと水面が躍っているような、そんな作品です。

「読メル幸せ」第79回

一章「金魚のカワセミ」では、主人公が留学先のメルボルンで恋愛相談していた友人のユリさんのある例えに感銘を受けました。

「誰でも玉手箱を持ってるものなんじゃない? ただ、玉手箱を開けたらあっというまに老人になるっていうのは違うと思うの。そうじゃなくて、箱を開いて過去をしみじみ懐かしんでるときに、自分が年を取ったことを知るのよ、きっと」

   

「読メル幸せ」第79回
「そのときに年を重ねた自分のことを悲しく思わないで、誇りを持てるように私はなりたいの。あの頃はよかったなあって嘆くんじゃなくて、箱の中にいる若い私にちゃんと胸が張れるように」

   

彼女は人生の道のりや記憶を玉手箱に例え、こう教えてくれました。なんて素敵な言葉なんだろうと感じて、スッと自分の中にこの言葉が入ってくるのを感じました。私は全話通して読んでこのユリさんという人がとても好きでした。主人公ではないけれど芯があって、自分で突き進んでる感じ。ユリさんから出てくる言葉には温もりがちゃんとあって好きなんです。

第二章、第三章と進むごとに前章に出てきた登場人物が出てきたり、こことそこが繋がるのかと気付くことが増えその度に胸が熱くなりました。第二章の「おまえが来てくれて嬉しかったけど、正直すぐにいなくなると思ったよ。遊びたい盛りの若者で、日々の欲に負けていくだろうなって」「日々の欲なんて、そんなことより……夢を見られなきゃ、だめですよ」という額縁職人の師匠と弟子の会話も好きだったな〜。私もずっと夢を追いかけて突っ走ってる身なので刺さる部分がありました。

「読メル幸せ」第79回

そしてそして第四章。思わず涙。まさかこうなっていくとは。そこからエピローグまでが美しすぎて、一人興奮していました。これは是非読んで感じて欲しいです。

1枚の画用紙に登場人物達が様々な色を描き完成した『赤と青とエスキース』。皆さんも是非堪能してください。

素敵な本の旅を。田島芽瑠でした。

「読メル幸せ」第79回

(次回は2024年12月中旬に更新予定です)


「読メル幸せ」アーカイヴ

Mama&Son オフィシャルサイト

田島芽瑠さんのプロフィール

「読メル幸せ」連載開始直前緊急Q&A!はこちら

「読メル幸せ」特別企画 田島芽瑠の一問一答!はこちら

 

ジャンルや国境を越えて素晴らしい執筆陣が結集!新しい紙の文芸誌「GOAT」、11月27日に刊行します!
椹野道流の英国つれづれ 第40回