中山七里『被告人、AI』

アシモフからの宿題
最新刊『被告人、AI』は一応ミステリー仕立てではあるものの、その源流はSFにある。物語の肝となるロボット工学三原則は、名作『アイ・ロボット』で有名なアイザック・アシモフが編集者ジョン・キャンベル Jr.とともに提唱したものだが、ミステリー作家でもあるアシモフはこの三原則をテーマに据えて数々の作品を発表しているのだ。いずれもロボットが三原則を破るような事件を起こし、その謎を探偵役が解明するという筋書きである。賢明なる読者諸氏はもうお分かりだろうが、本作品もアシモフの作品を下敷きにしている。実際、僕も愛読していたのだ。
作中でも述べているが、このロボット工学三原則の基本は「安全・便利・長期保証」というかたちで工業製品に脈々と継承されている。だからこそ我々は家電やらを安心して使用することができた。
少なくとも今までは。
ところが昨今、ロボット技術が軍事用ロボットや無人航空機に応用されるに至って状況は一変した。ロボットは平然と敵兵士に発砲できるし、住宅密集地に爆弾を落とすこともできるようになったのだ。
そんな折、前作『有罪、とAIは告げた』が存外に好評を博し、小学館からは続編の執筆依頼をいただいた。
ならばテーマはこれしかないと選んだのがAIの自我であり、アシモフの諸作品に対するオマージュである。アシモフのミステリーはすっかり古典となってしまったきらいがあるが、令和の今になり最新のテーマとなって甦った。思えばアシモフからは宿題を与えられたような気がする。今でも三原則は有効なのか。そして現代ミステリーでもテーマとして成立するのか否か。まあ気のせいだろうけど。
ただしこちとらガチガチの文系脳であり、人工知能の何たるかも知らないど素人であるため、執筆に手間取った部分が少なくない。参考文献もなく、専門家に取材しないのも相変わらずだ。それでも一編書き上げるのが小説家を生業とした者の意地である。
乞うご購読。
中山七里(なかやま・しちり)
1961年生まれ、岐阜県出身。『さよならドビュッシー』にて第8回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2010年デビュー。岬洋介シリーズ、御子柴礼司シリーズなど多くの人気シリーズを執筆するほか、『護られなかった者たちへ』『セイレーンの懺悔』『有罪、AIは告げた』など映像化作品も多く手がける。






