新刊エッセイ
コロナ禍はミステリではありません このたび『新 謎解きはディナーのあとで』が刊行の運びとなりました。執筆期間は一昨年の終盤から今年の正月まで。したがって五本収録された短編のうち四本までが、昨年春以降のコロナ禍において執筆されたものとなります...
岩に咲く一輪の花 「13歳のとき、もう一人の母親のことはわたしの記憶になかった。」という一文から始まるこの小説、10行にも満たない第1章で、早くも読者を物語の世界に引きずり込む魔力を持っている。いったいこの少女になにが起こっているのか。なぜ会った記憶もない実の母親の許に戻されることになったのか。
おじさんだらけの日本で、おじさんへの応援と感謝を込めて…… 日本の平均年齢は47歳、という数字を先日目にしました。日本はほぼおじさん、おばさんだらけの国。それなのに存在感が薄かったり、力を発揮できない中高年世代が多い気がします。森首相の女性蔑視発言は問題ですが、おじさんたちも虐げられているように思います。家庭では疎まれ、仕事場では時代遅れだと言われ……。
いつも言葉を探している 「嫉妬」と「埃」の区別がつかない。どちらのタイ語も無理やりカタカナにすれば「フン」だ。ネイティブの発音を聴くと違うのはわかる。でもその通りの音を正確に出すことができない。舌や歯などついているものは同じなのにどうして、といつも思う。
無名の諜報機関に降臨した若者 旧知の英国人が一か月に及んだ日本滞在を終えて帰国するという。その前日、皇居の濠を望むホテルのラウンジで雑談をしていた。初めての日本では随分苦労したらしいが、この国はとても気に入ったらしい。そんな彼が突然真顔で一つだけ教えてほしいと言う。
90歳のおばあちゃん、哲学の旅
メキシコのオアハカでひとり暮らす90歳のマルおばあちゃんが、会ったこともなかったたった1人の孫を探しに、ターコイズブルーの自転車に乗って、海辺
熱くて真剣でおかしくて切ない 台湾の若手作家、林育徳の『リングサイド』は、プロレスをめぐる10篇の連作短編小説。プロレスがとてもマイナーな娯楽である台湾で、プロレスにうっかり出会ってしまい、なぜか深く魅了されてしまった市井の人々のストーリーです。
私の体は、カレーで出来ている
小食で好き嫌いが多い私は、給食が大の苦手だった。 クラスに1人や2人、食べ切れなかった給食の残りを、机にしまい込んでいる生徒がいたかもしれないが
旅の記録
2015年の秋に佐木隆三さんが亡くなったのをきっかけに、1990年に刊行された『身分帳』に出合いました。新聞の追悼記事で、親友だった作家の古川薫さんが佐木さんの著書
北風ではなく太陽を
飲み会などで出る血液型性格診断の話題が苦手だ。「A型は几帳面」などとしたり顔で言っている本人も、相槌を打っている同席者も、本気でそうと信じているわけではな
祖父の日記と、祖母の方言
2016年9月、母方の祖父が亡くなった。80歳だった。
幸か不幸か──いや、きっと幸いなことなのだろう。私は23歳になるまで、身近な人の死に
さあ、今こそデトックスしましょう
気がつけば、作家生活十五年を迎えました。
そんな記念すべき年に『聖女か悪女』を上梓することになったのは、大袈裟に言えば「運命」のよう
現実を直視せよ
『震える牛』の田川警部補シリーズは本作『アンダークラス』で3作目となる。同シリーズは、非常に手間と時間がかかる。着想から取材、そして執筆。書き上げた作品を鬼担当
江戸っ子とは馬鹿の代名詞なり
……と、川口松太郎は書き残している。この言い回しが大好きだ。江戸っ子というと、粋だいなせだというけれど、江戸っ子の神髄はこの〈大まじめな馬鹿馬鹿
「誰かの物語」から「私の物語」へ
これまでも小説は手がけてきた。車椅子に乗った小学校教師の挑戦を描いた『だいじょうぶ3組』と、続編にあたる『ありがとう3組』、そして車椅子に乗
男性にもおすすめのバレエ・ミステリーです!
バレエを習ったことも観たこともなかった私がなぜバレエミステリーを書くことになったのかというと、担当者さまの「バレエを舞台とした
「小学生刑事」100億円のハードボイルド少女
皆さん、女子小学生はお好きでしょうか?
――いえ、返事は結構。子供たちは日本の宝。愛らしく、元気で、日本の将来まで支えて
気球とタコとBLM
以前、北極に鯨を追う捕鯨船が主役の冒険小説を手がけたことがあった。神秘的な北極の自然描写が素晴らしくて、その訳出に苦労させられたのだが、まさかそれと同