『大禁句辞典』刊行記念リレーエッセイ第1回 あさばみゆき

『大禁句辞典』刊行記念リレーエッセイ第1回 あさばみゆき
「禁句」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? 豪華児童書作家8名が、リアリズム、SF、恋、ファンタジーなど、様々なジャンルの物語を通して「禁句」に新しい解釈を与えたアンソロジー『大禁句辞典』が2026年11月19日に発売されます。刊行を記念し、「小説丸」では作家陣による書き下ろしリレーエッセイをスタート。トップバッターは、あさばみゆきさんです。

あさばみゆき

「禁句」をテーマに、とのご依頼を受け、さっそくネタを考えてみる。禁じられた言葉。「言うべきでない」言葉。どんなエピソードを引っ張り出せるだろうか。

 私は書き言葉でも失敗しがちだが、話し言葉だとなおさら、人様の禁句をうっかり口にして、寝る前に一人大反省会を繰り広げる粗忽者だ。それを小説のネタにしようとすると、単なる大反省私小説になってしまいそう。

 というわけで、禁を破った方ではなく、禁を布いた方の事情から攻める事にしてみた。禁句を強制できる権力を持つ組織が、禁句を設定した事にすれば──。そして破ったらば、制裁があるという世界。そう、国が「禁句」ルールを作るのはどうだろう。世界情勢が危うい時勢で、体制側から強制されるルールの理不尽さも練り込めるかも。

 そんな調子で思いついた、「国が設定した禁句」という設定からできあがったのが、「コロッケパンとレアカード」だ。タイトルのとおり、始まりは小学生二人のカードバトルであり、キーアイテムはコロッケパンである。そこからどう「国の禁句」に結びつくのか、ぜひ本文を。

 さてご一緒させていただいた先生方のお話も紹介オーケーとのことで、まことに僭越ながら、ここからは一読者として、その魅力の一端をご紹介。

 富安陽子先生の「鏡の家のアリサ」では、〝秘密の友達〟の正体に迫っていく、ジワジワと忍び寄る不穏さ、予想もつかなかった「禁句」への驚きが心地いい。石川宏千花先生の「田島になにをいってしまったのか問題」では、思考が突っ走る主人公の軽やかな語り口、さわやかな展開が楽しく、とあるテーマに向けられた真摯な視線を感じて心が温まった。秋木真先生の「探偵のかくしごと」では、小学生探偵が懸命に否定する「禁句」の存在。強がる主人公を応援しながら、謎解きまでワクワクと楽しさいっぱい。藤白圭先生の「その名をよぶな」は、ハートウォーミングなムードから、突如ほの暗くなる急展開を受け、前半のあれもこれも伏線だったのかと震え上がった。櫻いいよ先生の「ふたりの色は変わっていく」の、繊細で情感豊かな筆致でつづられる初恋。瑞々しい二人のやりとりに、禁句の存在すら甘やかに感じられた。にかいどう青先生の「スギやヒノキなどの植物から発生する物質が原因となり、くしゃみや目のかゆみといったアレルギー反応が出る〝あれ〟」の突き抜けたコメディは、「あー、あるあるー」が「あるけれど???」になり、「あるかーい!」とツッコミながら大笑い。斉藤倫先生の「ぼんやりしたこうすけ」が語る、言葉の力。主人公が迷い込む妖しく不可思議な世界の魅力。体の芯がギュッと締まる、まさにトリを飾るお話。

 魅力あふれるお話の目白押しに、発売前から「このお話のオチすごいよね!」「こちらは心ときめいて!」と、読者として語り合いたい気持ちが逸る。

 皆様にはぜひ、先生方の珠玉の作品群、思わぬ方向から攻めてくる様々の「禁句」へのスリルを、味わい尽くしていただきたい。「お前の話はどうなのだ」と? はい、それこそ禁句でございます(とてもとても楽しく書かせていただきました)。

  


あさばみゆき
神奈川県在住。第25回ニッサン童話と絵本のグランプリ童話の部大賞、第2回角川つばさ文庫小説賞金賞を受賞。主な作品に、「いみちぇん!」シリーズ、「サバイバー!!」シリーズ、『言葉の欠片』(以上、KADOKAWA)、「歴史ゴーストバスターズ」シリーズ(ポプラキミノベル)、「都道府県男子!」シリーズ(野いちごジュニア文庫)、『介護の花子さん』(Gakken)などがある。

【2026/11/19 発売】

大禁句辞典

『大禁句辞典』
著/あさばみゆき、富安陽子、石川宏千花、
秋木 真、藤白 圭、櫻 いいよ、
にかいどう 青、斉藤 倫


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