◎編集者コラム◎ 『若殿八方破れ(一)』鈴木英治
◎編集者コラム◎
『若殿八方破れ(一)』鈴木英治
累計20万部突破の書き下ろし長編時代小説、鈴木英治先生の「突きの鬼一」シリーズ。そんなヒット街道を突き進む鈴木英治先生と小学館時代小説文庫のタッグに、また一つ、新たな作品が加わりました。その名も「若殿八方破れ」シリーズ!
申し遅れました。私、「突きの鬼一」シリーズを担当する鬼の編集者、通称・鬼担──ではなく、その鬼担とともに「若殿八方破れ」シリーズを担当することとなりました、まだまだ鬼になり切れぬ、小鬼でございます。以後、お見知り置きを。
さてさて、本作の表紙をかざるのは「突きの鬼一」シリーズでもおなじみの、西のぼるさんのイラストです。上段の画像・左が「突きの鬼一」の主人公・百目鬼一郎太、二十八歳。美濃北山藩三万石のお殿様。右が新シリーズ「若殿八方破れ」の主人公・真田俊介、十九歳。名門・信州松代真田家、十万石の若殿です。
見比べていただいて、いかがでしょう。年齢の差はもちろんのこと。一朗太には堂々とした風格が、俊介には若々しい破天荒さがあり、「殿様」と「若殿」という身分の違いも、見事に描き分けられています。いやはや、西のぼるさんの画力には脱帽するばかりです。
ちなみに、この俊介が六尺棒を持つシーンは、やくざの出入りに加勢し、いざ、大立ち回りせんとする場面です。「えっ、若殿がなんでやくざと戦うの!?」と驚かれましたか? いやいや、本作での驚きは、こんなものではございません。
なんといっても、物語の開始わずか2ページで若殿が江戸上屋敷の寝所で襲われ、さらにその犯人を追う中、今度は若殿の無二の忠臣が殺されてしまい、さらにさらに、悲嘆にくれる若殿に殺害犯の名を告げたのは、意外や意外、上屋敷で若殿を襲った男で──、と本作は驚きにつぐ驚きの展開で紡がれていきます。
はたして、若殿を襲った男とは誰なのか──それは読んでのお楽しみ。「口入屋用心棒」「突きの鬼一」そして本作「若殿八方破れ」。鈴木英治先生の三大シリーズ、ぜひ、ご愛読のほどを。