◎編集者コラム◎ 『祝言島』真梨幸子

◎編集者コラム◎

『祝言島』真梨幸子


 真梨幸子さんと言えば、イヤミスの女王。イヤミスと言えば、後味が悪い、という「イヤ」の部分が強くイメージされてしまいがち。ですが、そんな方にこそお伝えしたい。本作、「イヤ」もさることながら、「ミス」の部分、すなわち「ミステリー」としての面白さが抜群なんです!

 物語は、現代、女子大生・九重メイが『祝言島』というドキュメンタリー映画に出会うところから始まります。実在していたとも、都市伝説とも言われる祝言島。ネットの記事は編集が繰り返され、何が真実なのかもわからない。

 そんなある日、母のすすめで映像制作会社でアルバイトをすることになったメイは、祝言島に関わる人々を追った再現ドラマを手にすることに。描かれていたのは、2006年に起きた「十二月一日連続殺人事件」の被害者たちや、1969年東京湾にある女性の惨殺死体が浮かんだ事件を追う男たちの姿……。

 彼ら、彼女らに共通するのは、祝言島という地に連なる因縁と左瞼の赤い痣。1830年、天保元年の祝言島開拓に端を発し、昭和から平成にかけて3世代にわたり忌まわしい呪いを受け継いでしまった女たちの運命とは。そして、明かされる「十二月一日連続殺人事件」の真相とは。

 本作を最初に読んだときに受けた衝撃は、とても大きいものでした。スケールの大きさ、時間空間を超えて絡み合う因縁の複雑さ。ありとあらゆるところにちりばめられた伏線と、その回収の鮮やかさ。そして、物語の核となる「呪い」の不穏さ。

 ラストシーンを読んだ瞬間「そういうことだったのか!」と、思わず本書の冒頭に戻ること間違いありません! そして、もう一度読むと、物語が別の顔を見せることに驚かされます。

 単行本刊行時、「常識を覆される傑作!」「間違いない超弩級作品」「味わったのは、希望か絶望か。そんな考えさえ、この本に嘲笑われているかのよう」と、全国の書店員さんから感嘆の声が続々とあがった本作。ミステリー好きを唸らせる大ボリュームの物語、待望の文庫化です。

 ここまで読んでくださったあなたに、最後にひとつ、本書を楽しむポイントを。豊澤めぐみさんによる、美しい装画。本書を読み終わったあと、幅広の帯をそっとめくってみてください。装幀の意味するところに気づいた方は、ここでも感嘆の声をあげること、間違いなしです。

──『祝言島』担当者より

祝言島

『祝言島』
真梨幸子

中藤 玲『安いニッポン 「価格」が示す停滞』/デフレを続け、発展途上国に転落した日本のこれからを考える
夏川草介『臨床の砦』