◎編集者コラム◎ 『タイムマシンでは、行けない明日』畑野智美
◎編集者コラム◎
『タイムマシンでは、行けない明日』畑野智美
偽札について語られる不穏な冒頭。
ここから時空を超えた壮大な物語へと突き進み、予想を遥かに超える結末が待ち受ける。
ロケットの打ち上げが行われる島に住む高校生・光二の話はもちろん、偽札に絡む仙台の大学教授・平沼についても語りたい。だが、この作品は熱く語り始めると思いがけずネタバレになってしまう恐れがあるので、とにかくこの本を手に取って読んでこの感動を体験して欲しい。人との出会いの奇跡と運命を信じたくなる物語。
高校生の光二には、密かに憧れている同級生がいた。そんな彼が大人になって思うこと。
「高校生の時、キミに好きだと伝えていたら、僕とキミは違う今を送れていたのかもしれない──」。誰しも、なにがしか青春時代の心の疼きをかかえている。あの時、別な行動を取っていたら、その後の人生は大きく変わっていたかもしれなかったのに、と。
「あの時」、あの人を選んでいれば幸せな人生だったかもしれない、
「あの時」、希望の学校に受かっていれば楽に生きられたかもしれない、
この「あの時」って言葉が、結構やっかいだ。妄想が妄想を呼び、経験できなかった架空の過去が今の自分を苦しめる。
だから、「あの時」を振り返る高校生の光二に、どんな運命が待ち受けているのか、作品を読んで見届けて欲しい。選択した人生であっても、選択しなかった人生であっても、自分のたどり着く場所は見えざる力によって定められているのかもしれない。そんな気持ちにさせられる、ただただ運命を信じたくなる物語です。
時空の行き来を巧みに紡いだ畑野さんの手腕は見事としかいいようがない。発売中の『ふたつの星とタイムマシン』と併せて読むことで本作の裏にあるエピソードのを楽しめるのも、この物語の醍醐味だ。タイムマシンシリーズ2冊ご購読の方は是非文庫袖のQRコードにアクセスしてアンケートにお答えください。抽選で100名様に『ふたつの星とタイムマシン』の装画入り(吉田健一さん・画)図書カード1000円分をプレゼント致します。ご応募お待ちしています!!
「タイムマシンが出てくるけど、SFというより「壮大な恋愛ドラマ」です。」
「単行本発売から6年半、文庫本にすることを諦めたこともありましたが、ついに! 私が描いた中で、1番おもしろい小説です」 (畑野智美twitterより)
ツイートに違わず畑野さんの最高傑作です(大好評発売中の『若葉荘の暮らし』ももちろん最高傑作です!)。単行本刊行から6年半の時空を超えて文庫として読者の方にお届けできる。この作品にこんな幸せな奇跡が待っていたなんて!!
まさに『タイムマシンでは、行けない明日』です。
──『タイムマシンでは、行けない明日』担当者より
『タイムマシンでは、行けない明日』
畑野智美