『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒/著▷「2023年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR

『ラブカは静かに弓を持つ』安壇美緒/著▷「2023年本屋大賞」ノミネート作を担当編集者が全力PR

文字で描かれた音楽を、もっと遠くまで


ラブカは静かに弓を持つ』は安壇美緒さんのデビュー3作目となる小説です。安壇さんは2017年に『天龍院亜希子の日記』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。続く2作目では、地方の中高一貫女子校を舞台に、思春期の焦燥や少女たちの成長を描いた青春長編『金木犀とメテオラ』を上梓。書店員さんが注目してくださり、応援の声が広がっていきました。

 そして3作目。当時の連載担当者は、ある実際の裁判をモチーフにすることを安壇さんに提案します。報道でご存じの方も多いと思いますが、音楽著作権管理団体である JASRAC とヤマハやカワイなどの音楽教室との間で争われた、著作権法の演奏権侵害を巡る裁判です。この裁判では、JASRAC の職員が立場を伏せて音楽教室へ通い、著作権法の演奏権を侵害している証拠を掴んだとして、法廷で証言を行ったことが話題になりました。

 連載担当者からの「変化球」を受け取った安壇さんは、そこから膨大な量の著作権法の資料を読み込み、音楽教室への体験レッスンにも挑戦しながら、物語の構成を練りあげていきました。実際の裁判はあくまで着想のきっかけにすぎず、著作権管理団体に勤める孤独な青年・橘の魂の再生を描き出す、心震える〝スパイ×音楽小説〟が立ち上がっていったのです。

 私は完成稿が出来上がった後に担当を引き継いだのですが、新人作家とは思えない繊細で美しい描写力と巧みなストーリーテリングに夢中になり、ラストシーンでは胸がいっぱいになったのを昨日のことのように覚えています。音楽っていいな、人と人とが交わしあう信頼ってめちゃくちゃ尊いな、そして何より、音楽を文字で描けるってすごい……。

 やがて「この物語はなんだかすごくいいぞ」という声が、小社の販売部や宣伝部、広報部など部署の垣根を越えて広がっていきました。さらに2022年5月の発売後には、書店員さんから、読者の方々から、たくさんの感動の声が日々、届き続けています。

 そして、このたびのノミネートを機に、初めて安壇さんの小説を読む方、『ラブカは静かに弓を持つ』の存在を知らなかった方にも手に取っていただいており、大変感謝しております。これから先、さらに広く、遠くまで物語を響かせることができたらと心より願っております。

『ラブカは静かに弓を持つ』コラム画像
スマホかタブレットでこちらへアクセスしてから『ラブカ』のカバーイラストにスマホをかざすと……AR橘樹が目の前に立ち現れ、バッハの無伴奏チェロ組曲を奏でます! ぜひお楽しみください。(詳細はこちらのツリーをご確認ください)

──集英社 文芸書編集部 伊礼春奈


2023年本屋大賞ノミネート

ラブカは静かに弓を持つ

『ラブカは静かに弓を持つ』
著/安壇美緒
集英社
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