◎編集者コラム◎ 『異人の守り手』手代木正太郎
◎編集者コラム◎
『異人の守り手』手代木正太郎
『異人の守り手』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作品の編集を担当しましたA田と申します。
本作の舞台は幕末、慶応元年の横浜。開港から六年、横浜には日々多くの外国人が行き交うも、いまだ日本人と外国人の衝突はなくならず、外国人の中には、身の安全に不安をおぼえる人も多くいたとか。
そんな中、人知れず闇から闇へ、外国人や彼らと交流を持つ日本人たちを守る〝異人の守り手〟と呼ばれる者たちが現れて――と、人を助ける影の〝仕掛人〟たちを描いた物語が本作となります。
そんな本作には初の和英辞典を編纂し、ヘボン式ローマ字を広めたヘボン博士や、そのヘボン博士にも助力し、日本の新聞広告界の先駆的役割を果たした岸田吟香。横浜で初の写真館を開業した下岡蓮杖など、幕末にいた実在の人物たちが数多く登場します。
フィクションではありつつも「こんな人たちがいたのか!」と驚きわくわくする逸話も多く、それが本作の面白さの核にもなっているように思います。
中でも私が興味を持ったのが、ジョセフ・ヒコ(浜田彦蔵)やサム・パッチ(仙太郎)といった漂流のすえ外国へと渡り、その後再び日本へとやってきた者たちです。
海難事故にあい外国へ渡った人物としては、日米和親条約の締結に尽力したと言われるジョン万次郎などが有名ですが、実は彼以外にも、不運な事故から生き延び外国へと渡った日本人は数多くいたようです。
上記の彦蔵と仙太郎は、同じ栄力丸という船に乗っている際に漂流します。しかしその後の紆余曲折で、二人が進む道は大きく離れ、彦蔵はかのリンカーン大統領とも会見するなど、通訳・貿易商として成功をおさめ、一方で仙太郎はペリー艦隊の中にいた唯一の日本人という稀有な経験がありながらも、引き取られた宣教師の冷遇に耐えかねて自殺未遂をするなど、波乱の多い人生をおくったそうです。
そんな同じ境遇にいながらも、大きく異なる人生を歩んだ二人の間には、はたしてどんな紆余曲折があったのか……そして、そんな彼らと「異人の守り手」の間でいったい何がおこるのか……続きが気になったかたはぜひ、本作をお読みいただければ幸いです。
書店様の店頭で見つけていただいた際は、ぜひご注目ください。以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました!
──『異人の守り手』担当者より
『異人の守り手』
手代木正太郎