◎編集者コラム◎ 『謎解きはディナーのあとで ベスト版』東川篤哉
◎編集者コラム◎
『謎解きはディナーのあとで ベスト版』東川篤哉
みなさま、大変お待たせしました! 麗子、影山、風祭──あの三人が、ついに帰ってきます! 2011年本屋大賞第1位、シリーズ累計400万部突破の『謎解きはディナーのあとで』といえば、令嬢刑事と毒舌執事のコミカルな掛け合いと本格的な謎解きの面白さが大ブームを巻き起こした国民的ミステリー。今さらご説明の必要もないと思うので、ほんの少しだけ創作裏話などご紹介できたら……と思います。
私が、初めて東川篤哉先生にお目にかかったのは、2006年の初夏。小学館に入社したばかりの駆け出しの新人編集者の頃でした。携帯電話を持っていらっしゃらない東川先生と待ち合わせ場所でちゃんと会えるか心配だった私は、お約束のお電話の際に「目印として文芸誌『きらら』を持っていますね!」とお伝えするだけで充分なのに、あろうことか「東川先生の見た目はどんな雰囲気ですか?」とかなり不躾な質問をしてしまいました。「僕は特徴のない普通の男ですよ」とサラリとかわされ、いざ待ち合わせ当日。
すんなりお会いできたのはよかったのですが、緊張のあまり、あろうことか財布を編集部に忘れてしまった私。執筆依頼の重要な打合せであるにもかかわらず、喫茶店の珈琲を東川先生にごちそうになってしまったのです。しょっぱなからドン引きされてもおかしくない大失態をおかしてしまいましたが、東川先生は優しく執筆の約束をしてくださいました。そして、打合せを重ねる中で、お嬢様刑事と執事探偵のコンビというキャラクターが誕生し、みるみるうちに大人気シリーズになっていったのです。
このたび刊行した『謎解きはディナーのあとで ベスト版』に収録されているのは、東川先生ご自身がセレクトした傑作3編と、新章へとつながる書き下ろし新作「殺意のお飲み物をどうぞ」の計4編。『きらら』1月号(12/20配本)からは、いよいよ『新 謎解きはディナーのあとで』の連載がスタートします。2006年に最初の原稿をいただいてから、干支が軽く一周していることを思うと〝光陰矢のごとし〟としか言いようがなく、感慨深いです。打合せに財布を忘れるような粗相はしなくなりましたが、「え、いまだに部下がいないの!?」と東川先生からは平社員っぷりをいじられる日々。その理由は……『新 謎解きはディナーのあとで』を読んでいただけたらと思います。さらにパワーアップした「謎ディ」シリーズ、お楽しみください!